人気シニアYouTuberから学ぶニーズとシーズのバランスと限界突破の方法

ユーチューバーは、つねにリスクにさらされています。ネタ探しにはじまり、YouTubeのアルゴリズム変更、競合の参入、燃え尽き問題など、継続して動画をう投稿しつづけることが本当に難しいものです。まして再生回数という数字が出てしまいますと、どんなにすごいスキルをもっている人でもなかなか難しいもの。人気ユーチューバーはどうやってバランスをとっていったのでしょうか。

今回学ぶユーチューバー:柴崎春通さん

>>「登録者130万人超の74歳水彩画YouTuber」柴崎春通氏が考えるオンリーワンの“優しいバズり方”【Watercolor by Shibasakiインタビュー・前編】 | 光文社週刊誌

最初はなかなか数が伸びなくて、登録者数が10万人にいくまで1年以上かかったんです。10万人はまだイメージしやすくて、(チャンネル登録者数が10万人を超えると贈られる)銀の盾が届いて「これはすごいものをもらってしまった」なんて思いました。

CNNにも出演し、現在はチャンネル登録者数100万人を超える、超人気ユーチューバーです。ものしずかで丁寧な語り口と、その圧倒的なアートスキルは、世界中から称賛のコメントがたえません。また、絵画教室をやられていた、ということで解説もとてもわかりやすく、まったくすきのないユーチューバーに見えます。

しかし、前述の記事では、いくつもの葛藤をのりこえ、今に至る悩みが吐露されています。

スキルアップ系ユーチューバーの前提

いわゆるスキル解説系ユーチューバーというのは、伸びにくいジャンルです。これはどんなにスキルがあっても、バラエティ系と異なり、限界がはやくくる動画ジャンルです。

  • その解説するスキルの市場規模で天井が決まる
  • 競合が出やすい(実際ほぼどんなジャンルでももういる)
  • 競合が多いため、よほどの差別化をしないとメンバーシップなどもしづらい
  • いわゆる解説はネット上に無料のノウハウがたくさんあるため誘引しづらい

もちろん、柴崎さんは講師もされていたり、著書もあったり、海外経験があったりと、解説動画のスキルや背景として十分すぎるくらいの資格があります。しかし、そもそも透明水彩で描く人向け、というジャンル自体の規模の小ささから、どう展開していくのかに注目をして、掘り下げました。

スキル系ユーチューバーの限界突破戦略

限界突破1:海外に広がった

柴崎さんの幸運は、CNNでとりあげられたことです。これは、アートということと、シニアユーチューバーという希少性が奏功したと思われます。

しかし、柴崎さんは、当初から英語でのタイトルや概要欄など、英語圏を意識した投稿をされていました。それらの積み重ねが、奏功したことはいうまでもありません。5年前の動画投稿時から英語タイトルやサムネイルなど工夫をされていました。

柴咲さん

ただ、前述の記事でも投稿する内容にもさまざまな悩みや迷いをもって、続けてきたことが打ち明けられています。実際、初期の頃は、料理動画のほうが再生回数が多いなど、さぞ迷われたことと察します。

好きなことして生きていく、はYouTubeのキャッチフレーズですが、いっぽうで好きな動画だけを投稿して、ブレイクするほど甘くないのが今のユーチューブです。シーズはもっていても、ニーズがない動画では再生回数はかせげないのです。しかし、シーズなど自分のもっているものや好きなことでないと継続がしにくいことも事実。

このバランスがむずかしいのです。

限界突破2:カジュアル層の心をつかむ

いわゆるスキルアップ系ユーチューバーの難しいところは、スキルに興味があるのであって、投稿者には興味がないというものです。それは柴崎さんでも例外ではありません。

柴崎さん

実際、柴崎さんも自分をだした動画では、他と比較するとあきらかに少ない再生回数にとどまります(もちろんそれでも多いですし、それでもリスナーから望まれていたとも書かれています)。

前述の記事でも柴崎さんは、どういうテーマに変えていくのかということを悩まれています。

一方で、透明水彩のハウツー動画は、意外と反応が少ない。10万人も登録者がいるのに、1万回しか再生されていない、なんてこともざらでした。
悩みました。よくよく皆さんのコメントを読んでみると、「絵を一緒に描きたい」という方は、割合としてそこまで多くない。どちらかというと、僕の声とか話し方を含めて、全体の雰囲気に癒される方が多いことがわかってきました。

柴咲さんは、自分の動画に「癒やされ」に来ている人が多い、ということに気づきます。そこから、間口を広げ、描き方を教えるだけでなく、気楽な気持ちで見てもらえる動画を増やした、とのことです。

柴崎さん

この頃に、初期の柴崎さんの定番動画である5分間ドローイングが確立していきます。全体的に5~6分の気軽にみられる動画が増えていくのでした。

たしかに、絵を習いたい人がみる、というより、路上でスケッチしている人を横から眺める、かのような気軽にみらえる感覚です。ここで、柴崎さんは再び限界を突破します。

限界突破3:とにかく継続する

じつは、柴崎さんは体調不良から今後についての不安を吐露しています。

しかし、この動画にはなんと1万件以上ものコメントがつき、大きなターニングポイントとなります。日本語での英訳字幕もない動画ながら、海外からのコメントもたすうよせられています。

病気などがきっかけてバーンアウトするユーチューバーも多いものです。しかし、柴崎さんはこれを乗り越え、ふたたびドローイング動画を投稿したのでした。

このとき、すでにもう、スキルアップ系ユーチューバーではなく、動画クリエイター柴崎さんになっていたのでした。もちろん、いわゆるスキルアップ系動画では、2~3万の再生回数からバズることはない苦しい日々がつづきますが、それでもうした苦難を乗り越えたという自信からか、画家としての軸はぶらさずに様々な企画を考え、安定して投稿を継続していくのでした。

  • 鉛筆だけで描こう(水彩よりも身近)
  • 世界の名所を描く(海外ユーザーからの親近感)
  • メンバーシップ開始

そして以降は、グルメ動画など日常を見せる動画のほうが再生回数が多くなるなど、あきらかに天井をつきやぶった再生回数をみせ、ついに当時流行っていたモーニングルーティーン動画で、再び天井をつきやぶるのでした。

実際、ある程度ファンがつきはじめてきますと、YouTubeのアルゴリズムがどうこうとか、競合が増えてきたとか、あまり関係なく安定して投稿しつづけることが大事な局面というのがあるのですよね。

これは他のユーチューバーでもよく見られる傾向で、おそらくチャンネルオーソリティが上がることで、YouTube検索でのファインダビリティが上がるからだと思われます。あとはYouTube自体がリスナーを増やし続ければ、それにひっぱっててもらえる、という流れです。競合を気にしなくてもいい時期がくるのですよね。

そして、そうして継続していると、モーニングルーティーンのようなヒットのたねが迎えにきてくれるのです。

限界突破4:過去の人気企画を進化させる

このあたりから、いわゆるバラエティ番組の企画のように「やってみた系」が増えていきます。いくつか抜粋しますと、小さな子供や興味本位でついみてしまいそうなものまで、バラエティ豊かになっていきます。

  • 【100円画材】100圴のクレヨンでまともに描けるの??
  • 【柴崎春通の水彩画】カラーマジック/ 鮮やかに仕上がる魔法の絵の具 / 1色で描く美しい花
  • 【100均画材】夏休みは100円クレヨンでリアルな樹木を描こう!
  • 【初心者必見】使うのはたったの2色だけ!綺麗な花びらを簡単に描く方法
  • 【100円画材】プロが検証!100均クレヨンでリアルな夏の風景を描いてみた / ダイソーの画材

そして、ついに冒頭で紹介したCNNへの出演がきまります。まさに世界のアーチストなった瞬間でした。

その後もさまざまな画材にチャレンジするやってみた動画や、5分間ドローイング、ショート動画などを投稿し、着実にカジュアル層をふやしていきます。また、ライブやデジタルなどにもチャレンジし、まさにユーチューバーといった感じになっていきます。

そして現在では、添削シリーズがうけており、ユーザーとのエンゲージメントをたかめる動画がふえています。もうこの段階まできますと、毎回10万以上もの再生回数をたたきだす、人気ユーチューバーです。

こうした中期のコアなテーマを節目節目に掘り起こす柔軟さと企画力。シニアであるかどうかはもはや関係のない、日本を代表するトップユーチューバーになられたのでした。

きっと今後は、でんじろう先生のように、企業とコラボして画材セットの販売やテレビ出演やCM出演など、タレント活動を増やしていくとさらに限界突破しそうな気がします。

柴崎さん、これからも健康でがんばってください!

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