TikTokの成功事例紹介記事を読むとき注意する2つのこと。TikTokの本質をみきわめずショート動画に過度な期待をする人は、きっと予算をソッコーで溶かすだけなので注意してください。

TikTokの成功事例を紹介する記事が増えてきたように思います。YouTubeが寡占状態となり、TikTok売れなどビジネスへの影響が注目され、そうした記事に注目が集まっているのでしょう。しかし、そうした記事には、実際にTikTokをやっていない、実情をあまり知らないのかな、そう思わざるをえない記事も多く見られるようになったため、イチTikTokerとしてちょっと今のTikTokをお伝えしたいと思い、まとめます。

TikTok売れが起きる本質はほとんど書かれていない

TikTok売れがなぜ起きるのか、その解説記事のおおくで語られていることが、今の若者はショート動画を好む、という仮説です。

これがかりに正しいとして、ではなぜYouTube売れや、Instagramリール売れが起きないのかまで、語られている記事はほとんど見たことがありません。

答えは明確です。TikTokはアプリを起動してすぐに、動画が再生されます。しかし、YouTubeやInstagramでは、ショート動画タブをタップしなければ、短尺動画が再生されることはありません。

この1タップがとんでもなく大きいのです。

TikTokはアプリを起動すれば、誰もフォローしていなくとも、勝手に動画が再生されます。また、するするとスクロールするだけで、たくさんの動画を再生できます。1タップも必要ないのです。ですから、最新の情報でなくとも、正確でない情報でも、とにかく目にはいりこんでくるのです。

ですからTikTok売れで、何十年も前の書籍の情報であっても見てくれて、受け入れてくれるのです。

YouTubeや、Instagramであれば、そもそも最新刊や話題書籍でないかぎり、サムネイルをタップさえしてもらえません。

わたしは、YouTubeもInstagramもTikTokも投稿し、フォロワーを獲得した実践のなかで、この1タップがいかに大変かを実感しています。ですから、若者にショート動画が流行っているからTikTok売れが起きるのでなく、TikTokならアプリ起動ですぐに動画を見てもらえるから
と気づけました。ですので、実際にTikTokに投稿し、バズの苦労を肌感覚で理解していない場合、そうした核心をつけないのは仕方のないことだとは思います。

ただこの本質を理解できますと、TikTokがニーズが顕在化していない層にアプローチできる媒体だということがわかります。

いっぽう、動きが面白い、トークがうまい、若者にささるコンテンツである、といった文脈からそれてしまうと、TikTok売れが起こらないこともすぐに理解できるかと思います。実際、TikTok売れているものは、書店で買える、コンビニやビレバンなど買いやすい場所で買えるもの、1000円未満という縛りがあることに気付けます。

潜在層にアプローチできるからといって、無敵というわけではないのです。

ですから、TikTokの成功事例を読み、うちもやってみよう、とビジネス利用を考えたとしても、たとえばTikTok売れを期待して、何千円もするトップスやコスメが売れることはおそらくない、でしょう(コスメとかであれば、アオった表現で感化される場合もあるかもしれませんが、そこはTikTokも制限が厳しくかかっているはずです※後述)。

もちろん、読者がたぶん理解できなかなと心配してあえて書いていない、という可能性はあります。

これからのTikTokでバズることは少なくなってゆく

2021年、Instagramがアメリカ議会で批判を浴びたことは、記憶に新しいことと思います。Instagramを見たユーザーが自分と比較しがちになり、鬱を発症するかもしれないというデータを知っていながら対策をしなかった、という告発です。

それをうけて、じつはTikTokでもそうした批判をかわすために、アルゴリズムの変更をテストしています。

「死体の花嫁ダイエット」などの動画でTikTokが少女を摂食障害にしているという調査報告を受けTikTokがアルゴリズム変更 – GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20211221-tiktok-inundates-eating-disorder-videos/

TikTok、コンテンツ推奨のアルゴリズムを調整へ(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版) – Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/f732f0d49c960ab11644fc86877c526f06fa879d

じっさい、国内の多くのユーザーから、「シャドウバンされてる?」「最近全然バズらない」といった声が多くみられます。シャドウバンとは、明確に利用ができなくなるBANではなく、運営がミュートのような形で利用者に悟られないように露出のペナルティを課す処理です。シャドウバンされるとどんなに良い動画をアップしても、インプレッションが得られないため、バズることがありません。ただ、もちろん、これらはあくまでユーザーの推測で、公式に発表されている情報ではありません。

しかし、それくらいかつてのインプレッションよりも大幅に落ちている、そう感じるユーザーが多いということです。ただそれらの原因のおそらくは、前述のアルゴリズム変更によるものと思われます。

ただTikTokは、それくらい本気で広範囲でやっているものと思われます。ですので、多くのTikTokコンサルタントの論調は、今後TikTokでバズることは減っていく、です。ダンス動画でさえも、たしかに出づらくなっている気がします。

じっさいに、TikTok公式アカウントでさえその洗礼を受けています。

平成ノブシコブシさんが出ている公式のゲームアカウントなのですが、開設からあるところもまではいいねがほぼ毎回1000の桁ついていたのが、ある投稿を境に100未満が連続するようになります。

TikTokゲームルーム【TikTok公式】 (@tiktokgaming_jp)
https://www.tiktok.com/@tiktokgaming_jp

公式にも忖度しない運営はさすがですが、今のTikTokの厳しさを象徴しています。

これからTikTokへ参入する人はどうすべきか

以上のように、残念ながら今後、TikTokの成功記事にあるような、ドリームは生まれにくい、と理解したうえで参入すべきです。こうなるまでの変化のスピードはとても早かったです。

ですので、前者の「アプリ起動ですぐに見てもらえる」というメリットも、そもそもインプレッションありきです。TikTokのAIがかつては多くの動画に陽の目があたるようにアルゴリズムが組まれていましたが、今後はそれも厳しくなる。そうなると、とにかく動画を見てもらえる、という特異性も薄れてきます。

うちの商品は知ってもらえれば売れる!だらかTikTokなんだ!というのは、かつては正解でした。とくに、動きが面白い、通販番組のようにあっという間にきれいになる、整理される、といった雑貨はバズること間違いなしでした。しかし、今はそのインプレッション自体がそもそもされにくくなっているのです。

こうなりますと切れるカードはもう、試すしかない、です。

そして、そうしたTikTokの変化とともに、YouTubeショートやInstagramリールも変わっていくでしょう。実際、YouTubeショートではYouTubeらしい動画がバズリはじめています。InstagramリールでもInstagramらしいおしゃれなショート動画や絶景などがバズりつつあります(Instagramリールはなんといいね数がでます!)。

それぞれのSNSの文脈にあわせ、ショート動画をしっかりユーザーに合わせた作りをして、投稿し試行錯誤する。

TikTokの成功事例記事を読み、参入しようとする人は、これからはこういう時代になるとみこした、手間をかけるだけの時間や、余裕をもった予算、それらを組んでから参入されることをおすすめします。

そうしませんと、バズるどころか、資金やモチベーションがショートすることになりかねません。気をつけましょう。こうしたことを知らないコンサルタントに依頼しますと、すぐに予算がとけて撤退・放置となりかねません。フリーの映像制作者やお笑いの人を見つけて、熱量をもってできる人をみつけたほうが安上がりになるとは思います。