1つのお店を定点観測することで、立体的にカフェを語る。そんな興味深いこころみが、ユーモアあふれる軽快な文章でつづられるエッセイ本。それが「喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです: 5年間の主観たっぷり研究記録」です。
2014年から5年間のブログ記事をまとめた電子書籍で、Kindleでのみ販売されています。今回どういう人におすすめしたくなるかと考えたところ、じつはカフェを開きたい人におすすめなのではないかと思いましたので、その切り口でレビューします。
この記事の目次
レビューの前提情報
喫茶アメリカン(銀座)の食レポ本
喫茶アメリカンというのは、東京の東銀座にあるサンドイッチ専門の喫茶店です。豪快なサンドイッチが人気メニューながら、連日女性客でにぎわうという多くのファンに愛されているお店です。
ハンバーグから溢れ出る肉汁!それをパンが吸うんだぜ…?レポ記事はこちらからどうぞ https://t.co/O8eHArTP0y⠀#喫茶アメリカン #言いたいことやまやまです pic.twitter.com/OEBBySdT7y
やままあき(@yamama48) January 30, 2018
Googleマップでは508件もの口コミがある老舗です。ちなみに、大阪に、純喫茶アメリカンというのもあるそうですが、まったく別のお店だそうです。
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Instagramでは、大阪の「純喫茶アメリカン」も、#喫茶アメリカン、というハッシュタグで出てきてしまいます。パンケーキ画像は大阪のもので、豪快なサンドイッチが東銀座の喫茶アメリカンの画像です。
>>#喫茶アメリカンハッシュタグ – Instagram 写真と動画
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佐賀県から来られたマスターが、高度経済成長期の頃から営む、こだわりのカフェそれが喫茶アメリカン。そのカフェのファンであるやままさんが、今回レビューします電子書籍の著者です。
喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです: 5年間の主観たっぷり研究記録 (やまま書房) Kindle
著者やままさんとは
フリーランスとして活動するやままさんは、主にブログやポッドキャストで情報発信をしています。本書以外にも電子書籍も著述されています。
>>ブログ:言いたいことやまやまです
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>>やままあき◆喫茶アメリカン(銀座)の食レポ本出しました さん (@yamama48) / Twitter
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>>凡人の星になる: 月間10万PVの雑記ブロガーが「凡人」を武器にするまでの七転八倒 | やまま | Kindle
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もともと大手企業で広報などをつとめていたかたで、情報発信や情報を整理して伝えるということのプロです。本書も、長年ブログで書きためた記事を再構成して出版されたとのこと。
わたしはかつてポッドキャスターとして取材をしています。ご興味があるかたはこちらの記事もどうぞ。
>>ポッドキャストの始め方を取材してきて俄然やる気がわいてきた
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レビュワーの立ち位置
さて、今回レビューをしますわたしの立ち位置です。以下の点についてさしひいてお読みいただけると、レビューを誤解すくなく読めるかと思います。
- 1度目は音声読み上げで読書、2度目は画面で通読
- 本書は献本して頂きました
- カフェめぐりは趣味程度
- 感性やデザインセンスはほぼゼロ
- パンは自分で作れる
- フリーランス歴24年目(会社経営13年)
- 教科書や電子書籍の出版経験あり
- BookLive!電子書籍ストア主催レビュワーコンテスト入賞歴あり
- やままさんとはお友達です
レビュワーとしては、文章の書き方などはある程度わかるものの、カフェ巡りについては素人レベルという感じです。
ただ、パンを自分で作るというところと会社経営をしたことがある、という点についてはちょっとだけ知識があります。
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カフェ経営本としてのアメリカン本
本書は著者であるやままさんが、喫茶アメリカンへの愛情をつづるエッセイです。いっぽうで、熱狂的ファンが5年間にもわたるお店の食レポというアーカイブをつくりだしたとも言えます。
カフェの経営をしたいと考えている人、現在カフェを経営している人に、おおいに示唆とヒントを与えてくれるはずです。わたしが本書で気になった箇所をレビューします。
店主へのインタビューが秀逸
やままさんは、一介の客です。しかし、何年も喫茶アメリカンに通い、そのあふれんばかりの愛情を情報発信してきました。
そんな信頼関係を築いてきたやままさんだから語られるお店の歴史には、引き込まれるものがあります。多くのメディアに紹介されるお店像とは異なる、経営の汗と営みの歴史がつづられています。
そのなかでも、喫茶アメリカンの昔の写真などがたくさん掲載されています。これらをカラーで見られることは電子書籍のメリットかと思います。
余談ですが「珈琲”館”みたいでいいだろ?アメリ”カン”」と少しだけ口を滑らせていらした瞬間を、私は一生忘れないと思います。
インタビューであるにもかかわらず、なんでしょう、やままさんのにやっとする顔が目に浮かぶようです。そんな愛情あふれるインタビューだからこそ、店主もいろいろなことを教えてくださるのだと思います。
(近くの歌舞伎座がリニューアル工事で客足が途絶えたため)閑古鳥さえ鳴かないお店になってしまいます。ところが歌舞伎座のお客様と入れ違いに、工事現場の方々が訪れるようになり~(中略)~それでヤケクソになってサンドイッチを大きくしたんだよ。
気持ちとしては複雑だったのかもしれませんが、顧客のニーズに柔軟に合わせるフットワークの軽さは、大いに参考にしたいところです。そんな赤裸々なお店のサバイブがかたられる本章は、本書でも必読の内容です。素人のわたしでも、読み応えのあるお店の道程です。
客に響くおいしいものの提供とは
本書を読みますと、喫茶店経営とは、そこに存在するすべてであることがわかります。そんなことは、カフェ好きならば当然だよと思われるかもしれません。
しかし、本書で大量に掲載されている店内画像や料理画像からは、これとこれを組み合わせてトータルコーディネートして、おしゃれなデザインにすれば・・・というそんな計算や緻密な戦略は、きっと無意味に思えてくるでしょう。それくらい、多くのお店情報にあふれる内容で、その圧倒的な情報量に、最初は読むのが辛いかもしれません(ブログの再構成という生い立ちからも文体が前半と後半とで異なることもあり)。
しかし、店主やスタッフさん、そして店主の毎月の手紙を一言一句もらさず記録しているエネルギーには、もはや感謝しかありません。カフェを経営する人であれば、実際に通い詰めたかのような追体験ができるはずです。そうすれば、その存在のすべてが、ここまでお客を虜にするのだということが、おわかりいただけると思います。
客の熱量は、きっと店主とスタッフの熱量に比例する。そう思えるお店の生き様を知ることができる貴重な記録集でもあるのです。
経営としての貴重な情報源
著者が書いているとおり、本書ではかなり細かなお店のメニューがわかります。価格はもちろんのこと、その変遷や材料に至るまで(もちろん全てではありませんが)。そのすべてが、カフェ経営者にはきっと興味深く見えることと思います。わたしが、経営的に気になったフレーズを以下にご紹介します。
昨年12月に価格改定&メニュー見直しを機に1200円になったビーフシチューセットの値引きキャンペーンが、6月から再開するではないか!価格が改訂されるまでは、なぜか年中無休でビーフシチューの値引きキャンペーンが展開されていたのだ。当時の正価は1300円であったが・・・
また、ページを読み進めていくと、年月とともに、メニューや価格も変わっていくわけですが、こうも書かれています。
ビーフシチューは1300円のメニューだが、いつ行っても「値引きキャンペーン」が開催されていて1100円だった。キャンペーンは2ヶ月くらいの長さである。
価格の二重表記ではないか!と突っ込むのは野暮の極みです。そんなことよりも、こうした価格改訂やメニューの変遷を知ることができ、そこからカフェ経営の裏側を想像することが勉強になると思うのです。
サンドイッチメニューで食パン一斤出てくるお店、それが喫茶アメリカンです。そんな破天荒な商品戦略に、通常のセオリーは通用しません。しかし、本書にはその衝撃の答えが書かれています。カフェ経営をしていいるかたは、本当に必読の本だと思います。
商品に魂を込めるにはどうすればいいか。ファンが教えてくれる唯一無二の内容になっています。
もちろん食レポエッセイ本としても
さて、カフェ経営の視点からばかり本書について書いてきましたが、もちろんエッセイ本としても面白い内容になっています。
著者はさくらももこさんのようなエッセイを書きたいと、どこかの記事で見たような記憶がありますが、たしかにその片鱗を感じさせる言葉選びのセンスやユーモアが、随所にあふれています。
さて・・・ビーフシチューのおいしさに感動してレポート終了というわけにはいかない。そんなことは食べログファイターたちにまかせておけばいいのだ。
こうした痛快なセンテンスが、いたるところに散りばめられています。わたしはあまりエッセイというものを読まないのですが、こうした一言一言に、ププッと笑いをこらえるのが大変でした。食レポエッセイ好きなかたも、そういう視点でふつうに読めると思います。
ところで個人的には、「焼かないトースト」へのツッコミがとにかく秀逸。たしかに、言われてみれば焼かないのはトーストとは呼ばないけれど、別にそれはそれでいいではないかと私などは思うのですが、ファンはそうではないわけですよね。やっぱり、ファンはこういう細部が大好物なのだとわかります。すべてを合理的に考える計算で出せるものではないと思い知らされます。
もちろん、焼かないトーストの理由も本文に書いてありますので、みなさんぜひ実際にお手にとって読んでみてください。店主も狙ってつけたネーミングではないとは思いますが、ここまでいじってもらえることは、きっと幸せに思っておられるのではないでしょうか。
いっぽうで気になった点
本書はやままさんのブログに書きためていたブログ記事を再構成したものです。ボリュームがとても多いことはお買い得感がある一方、前半と後半とで文体や熱量や表現が統一されていない部分があります。
そうした細かい点が気になるかたにはあまりおすすめしません。ただ、ブロガーとしての文体の変化が身近に感じられますので、ライターを目指している人にはおおいに参考になると思います。
電子書籍であるため、タブレットを縦でも横でも見やすくみることが出来ます。また画像などもピンチアウトで拡大して、より詳しくメニューや文字を見ることができ、とても貴重な資料になっています。ただ、残念ながらKindleのみの発売のため、アンリミテッドユーザーには無料で読めるという恩恵はありますが、Kindleアプリを使っていない人は読めない、というデメリットがあります。
私のような変わり者のためにも、ぜひとも他の電子書籍ストアでも取り扱ってほしいと思いました。
内容とはあまり関係のない点を厳しく指摘してしまいましたが、それでもスリープに対応している読み上げアプリがGooglePLAYしかない以上(iPhoneのKindleでもできるが残念ながらスリープ時にはページ送りに対応していない)、読書を効率的にしたいと思っているユーザーには、内容がよいだけに多くの読者に届かないことは残念でなりません。
ちなみに、本書はいわゆるセルフパブリッシングです。でんでんコンバーターというパブリッシュサービスを使って、Kindleに著者登録しますと、自主出版が可能です。わたしもかつて出版したことがあります。
いっぽうで、BCCKSというサービスを使ってセルフ出版しますと、KindleだけでなくKADOKAWAやiBooksやBookLive!など多くの電子書籍ストアに配本することが可能です。電子書籍アプリというものは、一度使ったあとはそこに本がたまっていくため、乗り換えがほとんどおきない媒体です。ですから、ぜひ次回作には多くのストアで出版されることを期待したいです。
>>BCCKS / ブックス – ストア配本サービスについて
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こだわりの店舗経営とは
本書を読まれたかたは、きっとこちらの本も参考になると思います。ベッカライブロートハイムというパン屋さんが書かれた本です。
パン屋の仕事 | 明石 克彦 |本 | 通販 | Amazon
こちらは店主が書かれた本ですが、こだわりのパンをつくるためにどうやって経営をすればいいのかを書かれています。そして、難しい経営の話ではなく、またマーケティングのことでもなく、とにかく実直にパンをつくり続け、どうやって売上を出して、経営し続けることにもがいていくのか。お客様への信頼に答え続けるにはどうしてきたのか、がやはり赤裸々に書かれています。
その愚直なまでの姿勢は通じるものを感じました。経営者目線でお読みいただければきっと共感していただけると思います。おすすめです。
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さて、食レポ本、エッセイ、カフェ経営本、さまざまな風景をみせてくれる電子書籍アメリカン本。この本を読まれれば、きっと読後には喫茶アメリカンに行ってみたくなること間違いなしです。
そして、帰りのその手のなかには、あのたまごサンドのお持ち帰りがあることでしょう。みんなを幸せにしてくれる電子書籍だと思います。
喫茶アメリカンについて言いたいことやまやまです: 5年間の主観たっぷり研究記録 (やまま書房) Kindle
まとめ
- ファンに愛されるお店とはどういうお店かわかる
- どんなに儲からなくともこだわりを徹底すれば突き抜ける
- リスクをとりファンを大事にする
客に愛されるお店というのは、徹底したこだわりと一貫性があるものだと思います。いっぽうで、信頼関係ができているのであれば、肩肘張らず正直にすべてをさらす、絶対に手抜きはしない。そういう等身大の運営が見えるからこそ応援したくなるのかなと思いました。
いっぽうで、店主の健康管理(いつもいる安心感)と、時代に合わせてメニューを変える柔軟性、その両面が必要なのだともわかります。辛抱づよく信念をもって経営をしていれば、いつかやままさんのようなファンが現れて、応援をしてくれるのだと思います。
ファンをつくりたいカフェの経営者は一読されることをおすすめします。
・・・と、こんな感じの父親目線で、SNS、ドライブ、ゲーム、生活防衛ネタが多めでブログ記事を2009年から書いています。よろしければLINE@をフォローしていただけると更新情報を受け取れますのでおすすめです。記事を気に入ったというかたはぜひ。
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