おすすめビジネス書「無印良品の教え」レビュー。世界ブランドとなった無印良品の仕組みと組織づくりと世界展開が学べる良書です。読後は売り場に行きたくなるビジネス書です。

無印良品の売り場に行きたくなる本です。いまや世界のブランドになった無印良品の強さの秘密を、仕組み・組織づくり・世界展開の3つの側面から超高速で学べる良書です。合本ということで第3者のプレーンな編集も読みやすさにつながっておりとても読みやすいです。

本書がおすすめな人

無印良品

本書は、無印良品におけるMUJIGRAMなど業務基準書策定といった仕組みづくりからはじまったV字回復から、海外展開での成功までの数年間をおさめた本です。

ですので、ある程度組織づくりに興味のある人にむいています。

  • チェーン店などがある大きな組織にいて組織づくりの裁量がある人
  • 世界展開を目指しブランド構築などを手掛けている組織の中の人
  • アルバイトなどの部下を育成する立場にいる人
  • 現在の無印良品のブランドの背景を知りたい人
  • 仕組みづくりや組織づくりに3年などある程度時間をかけられる人
  • 大手の海外展開に興味のある人

ですので、本文中にさらっと「(マニュアル作りの参考に)まずファッションセンターしまむらのマニュアルを見に行きました。」書かれるほどの規模感の会社につとめている人がベストマッチだと思います。

ですので、いっぽうで、ブランド力のない企業や、数名ほどの小さい企業では、直接的に参考になるところは少ないかもしれません。ただ、人材育成や、ひとつのストーリーとして読むぶんには、3冊が凝縮されていて、再編集されていますので、とても読みごたえはあります。

いまちょうどPRをしているのか、無印良品の強さについての記事が、ネット上にたくさん出回っています。

>>「すべての新入社員は約3年で店長に」無印良品が若手を厳しい環境に放り込むワケ 仕事は失敗しながら学んでいくもの | PRESIDENT Online

これらの記事をよんで興味がわいた、参考になりそうだからもっと読みたい、という人におすすめのビジネス書です。

ちなみにわたしは、無印良品が世の中にでた頃にちょうど学生で、リアルタイムで無印良品の店舗展開を見てきましたし、たしかいn一時期ふるわなかった時期もみており、興味深く読みました。

無印良品の教え 「仕組み」を武器にする経営 (角川新書) | 松井 忠三

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それでは、「無印良品の教え」をレビューしていきます。

「無印良品の教え」レビュー

ムジグラムという業務基準書の効果

業務をマニュアル化すると聞くと、誰しも融通がきかず固定化され、柔軟に対応ができなくなってしまうのではないか、と思うかと思います。

しかし、本書ではそれについてもしっかり言及しています。逆に、マニュアル化せずに属人化するリスクのほうを強調しています。

マニュアルは時間がかかったとしても、自分たちの手で一からつくり上げていくしかないのだと腹をくくってください。MUJIGRAMも軌道に乗るまでは五年ほどかかりました。

ポイントは、マニュアルもみなでつくる点です。そうでなければ、やらされている感が先に立ち、うまくイカないことを本書では何度も強調しています。

また意外に思うかもしれませんが、いわゆる人間性を重視しそれがベースになっていることも強調しています。

無印良品

  • 挨拶をきちんとする
  • すすんでゴミを拾う
  • 締め切りを守る

なんとも当たり前と思うかもしれませんが、こうした小さな一つ一つをおろそかにしないことが、マニュアルの良さを引き出し、強い組織へと成長させることを実感させてくれます。

ムジグラムを作る前は、店舗によって陳列やレイアウトが異なるということもあったそうですが、今ではそういうぶれもなくなり安定していったそうです。

100点をとれる人が数名いるよりも、80点が取れる人がたくさんいたほうが、組織としてのパフォーマンスが上がる、という組織にとても向いている手法なのだと、よみやすく丁寧な言葉からは、すんなり体にしみるようにして理解できます。

具体的なツールや手法が役に立つ

本書には、無印良品の改革でつかった具体的なツールや手法が、しっかりと製品名や具体的名称で出てきます。これは単純に親切だと思いました。もちろん、前述したように現在ではアップデートされているものもあるかもしれませんが、ここまであけすけに、具体的なツールが紹介されている本はめずらしいと思います。

無印良品

ムジグラムやステップアップシート、WH運動、マネジメントサポートブック、一球入魂、といった社内でのツールから、GEがつかったとされるファイブフォックスや、キャリパージャパンが提供するキャリパープロファイルといった外部ツールなど、隠すことなく具体的名称を明かしてくれています。

これはこうした仕組みづくりや組織づくりの最前線で改革を進める人には、とても役立つ情報なのではないでしょうか。

また、後半の海外展開の章では、具体的な企業名をあげて、その戦略について比較しつつ、こういう方法もあると、コンサルティング的な言及までするくだりもあります。

ちょっと深よみしてしまうと、まるで、著者が今後、コンサルタントに転身するための名刺代わりとなるような分析かのようです。それくらい後半には他社の事例がたくさんでてきて、海外展開を参考にしたい人にはとても有用な内容になっています。

このように、本書は徹底的に、本文からも、抽象的な根性論やあいまいな言い方を排除し、読者にわかりやすく理解しやすいよう書かれている点が、すばらしいです。まさに、著者の仕組みづくりや現場での改革を進めるさまを目の当たりにしているかのようです。

性格を変える、ではなく、行動を変える。

本書で随所にでてくる下りです。わたしもほんとうにそう思います。人はそうそう変われるものではありません。しかし、業務として具体的な行動はある程度、指導できます。そうして具体的に行動が変容することで、気持ちも変わってくるという大切さを繰り返しといています。

改革をなしとげた著者からは説得力のある至言として、読者に受け入れられます。

本書は、こうした仕組みづくりや、いっぽうでヒューマンな人との関わりあいのなかで、どのようにして人材を育て、組織をつよくしていくのか、という現代大手企業の課題にまるごとこたえてくれる内容となっています。

再編集したという多少のできすぎ感はありますが、それでも前書を買っていない人には、まず買って損のないビジネス書と言えるでしょう。

注意点~新たなチャイナリスクは非掲載ほか

くりかえしになりますが、本書は、2013年移行に刊行された書籍の合本版です。

本書は、小社より刊行された『無印良品は、仕組みが9割』(二〇一三年)『無印良品の、人の育て方』(二〇一四年)『無印良品が、世界でも勝てる理由』(二〇一五年)を合本の上、加筆・改筆をして再編集を行い、改題したものです。

いちおう、加筆や再編集などされていますので、読むには読みやすいですが、さすがに、最新のチャイナリスクのトピックはふれられていません。

>>「無印良品」中国企業に商標登録された…良品計画の声明は名誉棄損と賠償命令 : 読売新聞オンライン

いちおう、一番最後の章にさらっとこう書いてあるにとどまります。

当時は現地の企業と裁判で係争中だという事情もありましたが、まだMUJIの知名度もそれほど浸透していなかったからでしょう。

また、若干、ムジグラムに関する表記が重複することもあるなど、ごくたまに、あれ?と思うところがままありますが、合本だとわかると、逆に、うまく合体させたなあと思うくらい、最初は気づきませんでした。

ですので逆に、合本でお得に読めるというメリットのほうが大きいと感じました。

さて、近所の無印良品の店舗に行ってきました。

無印店舗

その他にも、キャッチコピーなどをプリントしたバナー(垂れ幕)を、店舗の天井付近やお客様の目につく場所に配置して、「MUJIとはなんぞや」というメッセージを発信しています。・・・MUJIのようにブランドコンセプトを前面に出したディスプレイにはほとんど出合いません。

といった垂れ幕は、わたしが行ったお見せでは店頭に1つあったのみで、あとコンセプトも本書に書かれています「『これがいい』ではなく『これでいい』」とは異なっている点は注意して読んだほうがよいでしょう。

むしろ、そのように変化したことを、続刊では期待したいと思いました。

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さて、本書が気に入ったかたであれば、こちらの書籍もお気に召すかと思います。

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ファミリーマートが海外展開したときの書籍です。しかも本書では、日本のおにぎり文化がない国へ行き、ローカライズもしますが、おにぎりにはこだわりをもって、浸透をさせていきます。

こうした奮闘ぶりが、とても前著とかぶり、読みやすいかと思います。おすすめのビジネス書です。

また、組織論のところでは、世界的巨大企業になりましたNetflixのこちらのビジネス書がおすすめです。

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いわゆる成果主義というか、たしかにこれならば強い人しか残らないよなぁと感心させられる内容です。もちろん、前著に書かれているように、日本人向きの雇用制度というのは存在するとは思いますが、それでも、無印良品もかなりの「修羅場」や「鍛え上げ」を重視している点では、それらを耐えた人を入れるのか、社内でそうした修行をさせるのか、の違いかなと感じました。

おすすめのビジネス書です。Netflixの躍進の源泉が理解できるかと思います。

「無印良品の教え」目次

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はじめに

  • 会社の緊急時を「仕組み」で乗り越える

第1部 無印良品は、仕組みが9割

第1章 売り上げとモチベーションが「V字回復する」仕組み

「赤字三八億円からのV字回復」を実現/〝戦略二流〟でも〝実行力一流〟なら良し/経験主義だけでは「会社は滅びる」/会社の問題を「新しい仕組み」に置き換える/部下の意識が「自動的に変わる」方法/「売れ筋捜査」「一品入魂」のアイデアはどう生まれたか/「お客様の声からヒット作をつくる」具体策/「見せかけだけの突破口」に注意/優秀な人材は集まらない。だから「育てる仕組み」をつくる/人は「二度失敗して学ぶ」/やらないことを決める/走りながら考える。但し、腹を括って

第2章 決まったことを、決まったとおり、キチンとやる

マニュアルをつくったところが「仕事の始まり」/なぜ「仕組みをつくる」と「実行力が生まれる」のか/年間四四〇件の「現場の知恵」を逃さない/いいマニュアルは「新入社員でも理解できる」/仕事の「何・なぜ・いつ・誰が」/「隠れたムダを見つける+生産性を上げる」法/あなたの仕事のやり方〝最新版〟になっていますか?/なぜ「商談のメモを部署全体で共有する」?/「七〇〇〇件の苦情を一〇〇〇件に減らした」リスク管理法/マニュアルで「人材を育成」する/マニュアルで「人材育成をする人を育成」する/「見える化→提案→改善」という循環

第3章 会社を強くするための「シンプルで、簡単なこと」

「締め切りを守る」「ゴミを拾う」──強い社員の条件/なぜ「挨拶を徹底する」と「不良品が減る」のか/部長も社長も「さん付け」で呼ぶ/提案書のハンコは「三つまで」/知恵は「他社から借りる」/他社とは〝徹底的に〟交流する/反対勢力はゆでガエル状態で染めていく/「幹部は三年間、固定」せよ!/部下のモチベーションを上げる一つの方法/コンサルタントには組織は立て直せない/迷ったときは「難しいほうを選ぶ」/性格を変える、ではなく、行動を変える

第4章 この仕組みで「生産性を三倍にできる」

「結果を出せる努力」には方法がある/原因が見えた途端に問題の八割は解決する/「机の上がきれいな会社は伸びる」理由/「仕事のデッドライン」を見える化する/ホウ・レン・ソウが「人の成長を止める」!/「一八時三〇分退社を徹底する」理由/なぜ、残業をなくせないのか/提案書は「A4一枚」/「形だけの会議」をなくそう

第2部 無印良品の、人の育て方

第1章 無印良品は、なぜ離職率がこれほど低いのか

「人が成長する会社」を「いい会社」という/逆境を「あえてつくりだす」理由/「無印生まれ・無印育ち」の社員を育てる/どうして今、「終身雇用+実力主義」を目指すのか

第2章 若手社員を「折れない社員」に育てる仕組み

「現実」と「理想」のギャップを体で理解する/なぜ入社約三年で「店長」を任せるのか/「部下のマネジメント」とは一体何だろう?/リーダーシップは「誰でも」身につけられる/新入社員が必ずぶつかる壁/若手社員育成の極意──「つかず離れず」/新入社員を「人を育てさせて」育てる/赤点を付けられた時から「真のキャリア」が始まる/問題から「逃げない」。絶対に

第3章 「チームワーク」はつくるのではない。育てる

無印良品に「チーム」はあっても「派閥」はない/最強のチームは「つくる」のではなく、「育てる」/理想的なリーダー像は「ない」/リーダーの資質──「朝令暮改を躊躇ためらうか」/モチベーションは「成果物」から生まれる/「問題のある部下」への対処法/「調整」と「決断」を混同していないか/チームの目標は全員で共有する/新人リーダーは「ざっくばらんに」

第4章 モチベーションを引き出す「コミュニケーション」術

「褒める・𠮟る」をきちんとしていますか?/本当に褒めたいときは「直接伝えない」/「ミスの背景を探る」のはリーダーの仕事/「部下の反論」は八割正しい/言い訳は「きちんと追い詰める」/人の短所は「直らない」と心得る/「やる気のない部下」のやる気に火をつける/一〇〇の議論より、一度の飲み会

第3部 無印良品が、世界でも勝てる理由

第1章 「巡航速度」でビジネスを広げよう

大成功をおさめた一号店の出店/ヨーロッパ進出に暗雲が立ち込める/海外のMUJIは「一一年間、赤字」だった/海外で勝てる七つの方法/方法1 オリジナリティを持つ/方法2 郷に入っては郷に従え/方法3 グローバル化の三条件を確立させる/方法4 コストはいつも最重視/方法5 失敗しない仕組みをつくる/方法6 国別の浸透度に出店ペースを合わせる/方法7 海外に向いている社員の選び方

第2章 商品開発は「つくる」より「探す」

「何物にも代えられる」という商品力/ラップケース、わた菓子……「意外な人気商品」の秘密/同じ「白色」だって何種類もある/無印良品が磨いてきた「見出す力」/「つくる」ではなく「探す」──ファウンド・ムジ/あの「直角靴下」はこうして生まれた!/世界最先端のデザインを生んだ──ワールド・ムジ/日本で売れる商品は「定番になる」

第3章 「MUJIイズム」に国境はない

現地スタッフの採用基準は「MUJIが好き」/現地のスタッフは「本流」で育てる/ブランドコンセプトを「徹底して共有する」仕組み/海外の社員をMUJIイズムに染めていく/広告を使わずに「宣伝する」方法/コンセプトはお客様にも「きちんと説明する」

補章

  • 「海外で勝ち続けるMUJI」の立役者、松﨑曉さん(良品計画副会長)に聞く
  • おわりに -あせらず、くさらず、おごらず