stand.fmの2022年7月27日のアップデートが大きな転換点になりそうに感じましたので、取り上げます。音声配信業界では、先日のVoicyの大型資金調達が話題になっていて、あとは音声広告普及で終わりかな、と思いきや。どこが凄いのかご紹介します。「stand.fmの歴史」を著述した私が考えることも後述します。
stand.fmアップデート~BGM付きダウンロード
>>#28 webで音源ダウンロードができるように!7月ラストのなかのひとfm!| stand.fm
PCブラウザからstand.fmにログインしますと、自分が収録した放送がダウンロードできるようになりました。
- バックアップになる(企業利用などではとても重要)
- 音源を再編集して総集編など新たなコンテンツが作れる
- Anchorなど他の音声配信にも投稿できる
こうしたメリットがあり、発表されていた公式のライブでも評価コメントがとびかっていました。
音声に限らず海外では、こうした投稿コンテンツは投稿者のものでありダウンロードもできねばならない、という考え方が多く、今回のstand.fmの実装もとても評価できるかと思います。
これがきっかけで新規登録者が増える、というものではないでしょうから、英断だと思います(ただ戦略上重要性があったのかとは思いますが後述)。
ちなみに、収録配信もライブもダウンロードできます。
ダウンロードファイルは、m4aです。ですので、Radiotalkに投稿するときには、mp3などに変換する必要があります(Radiotalkは最大12分)。Anchorではそのまま配信できます。
BGM付きでも他媒体にアップロードOK
そして、驚くべきは、stand.fm提供のBGM付きでのみダウンロード可能なのですが、そのBGM付きで、他の媒体にも投稿OKだというのです。
stand.fmでは100曲以上ものBGMを提供しています。これがstand.fmのなかだけでなく、他でも使って良い権利処理がされていというから驚きです。運営の事務作業もたいへんだったことでしょう。敬服に値するでしょう。
そして、ライブ中で言っていたのは、楽曲の表記も必要ないとのこと。
個人名もタイトルに含めるほどの、クォリティの高い曲もありながら、それをつかいつつも他の媒体にも表記なしで配信していいのは、とてもありがたいことですね。
ちなみに、AnchorでもBGMを提供していますが、サポートに問い合わせた人いわくは、そのBGMも他媒体でもOKのようです。ですので、大勢の流れとしては、使いやすくするというのがトレンドなのですね。
安心して他媒体へ配信できますね。
ニュースカテゴリーがトップに登場
ニュースカテゴリーがアプリのトップ中央部分に登場しました。
- 運営が手動で掲載したニュース放送
- Podcastの超有名番組も掲載
- 地上波ニュースメディアを流すチャンネルも登場
- 今後、#ニュース の配信からも選出
やさしいSNSを標榜しているstand.fmが、他媒体のプロの番組を連携掲載することとなりました。リスナーがプロのニュースを聴けるメリットがある反面、ニュース配信をしている一般配信者は機会損出する可能性がでてきました。
もちろん、stand.fm内部からも選出されています。ただ、そのかたもとくに事前連絡はなく、独自の基準で選ばれたのだそうです。
掲載されています番組はほぼPodcastです。つまり、stand.fmの内部的には、Podcastを受信できるフレームワークが整った、ということです。つまり、可能性としては、あなたのstand.fmアプリで、他媒体のPodcastを聴けるようになるかもしれない、ということです。
Podcastはオープンな技術ですので、AppleやSpotifyでなくとも、受信専用のPodcastアプリがじつはたくさん存在します。海外では企業買収するほどの資金力をつけたPodcast受信アプリ開発企業まであるほどです。
人気Podcastはわかりませんが、OEM配信されているニュース番組は、間違いなくstand.fm自らがプロデュースして受信した番組と思われます。つまり、stand.fm運営がいわゆるオウンドメディア以外に、番組制作まではじめた、という意味をなします。Radiotalkなど他媒体でもオウンドメディアとしての番組は多くもちますが、一般配信者と競合する番組をつくるのは、Voicyと同様の手法です。
公式の発表はありません。ですので、ニュース配信番組がstand.fm制作でない可能性もあります。ですので、あくまでわたしの妄想からは出ませんが、Voicyと正面対決する道を選んだようにも見えます。
今後のstand.fmを考えてみる
いっぽうで、収録ダウンロード可能&BGM付き、という機能を実装したということは、ストレートに解釈すれば「他の媒体でもあなたの番組を配信して認知させてね」と受け取れます。
いっぽうで、「RadiotalkやAnchorのように、Podcast配信はやりませんので、自分たちで何とかしてね、とも受け取れます。」Podcast配信は、配信元になりますと、当然サーバーの負荷が高くなり運営コストも高騰します。
実際、世界的展開しているあのSpotify傘下のAnchorでさえ、負荷が増えますとポッドキャスト配信が遅延したりします。Radiotalkはその点、収録配信を12分に、ライブを基本30分に制限して、負荷を下げています。それくらいポッドキャスト配信のシステムは負荷がかかり、維持コストが高騰します。
ですので、最近資金調達をしていないstand.fmですと、おそらくはポッドキャスト配信まではしないかな、と。ただ、ニーズがあり、スターを生み出したい運営としては、ダウンロードという一手を考えたのではないかと思うのです。今はエンジニアの確保もほんとうに大変です。でしたら、権利処理でなんとかできる、というほうを選択してもおかしくありません。
>>サイバーエージェント「初任給42万円」が示す深刻な「IT業界の人材不足」(ニッポン放送) – Yahoo!ニュース
stand.fmの歴史: スタエフの戦略と音声配信業界に挑んだ5年間 | 吉田喜彦
今回のアップデートは、機能的には一般受けするものではないかもしれません。
しかし、stand.fmのおかれている競争環境における、ポッドキャストへの向き合い方と、ニュースをOEMする姿勢を見せたことは、これまでのstand.fmの方向性とは一線を画すものに見えます。
果たしてstand.fmは今後どう舵取りをしていくのか。
そしてまだもっと、凄いニュースを出してくるかもしれません。
楽しみですね。