音声配信業界にまた大きな再編がくるかもしれません。

先日、Voicyが技術顧問を新たに登用したとリリースが出ていました。あまり話題になっていませんが、Voicyの次の一手としてはとても象徴的な打ち手で、今後の音声配信業界の新たなうねりを予感させるものでしたので、今後の音声配信業界のいち見解をまとめたいと思います。

Voicyが技術顧問を採用

Voicyの技術顧問に山崎大輔氏が就任。|株式会社Voicyのプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000246.000021111.html

山崎さんという人はどういう人かというと、とにかく巨大IT企業に多くの人脈をもつ人物、という感じです。

筑波大学卒業、ヤフージャパンを経て、広告配信システムを提供するScaleout社を立ち上げ、独立。CEO兼CTOとして、DSP/SSP開発を担当。2013年、medibaによる買収に伴いKDDIグループ参画。2015年nanapi、BitCellerと合併し、Supership株式会社取締役CTOに就任、2020年に退任・退職。

このような人物を招聘するということは、Voicyが今後こうしたポジションへ行きたい、ということのあらわれなのではと、読みます。

ポッドキャスト勢の勢いが加速

audiobook.jp、聴くともっとパラスポーツを楽しめるPodcast番組「全力パラスポーツ!」の配信を開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000186.000034798.html

PitPaがデジタルガレージ、ANRIより約2億5,000万円の資金調達。

PitPaがデジタルガレージ、ANRIより約2億5,000万円の資金調達。Podcast配信ビジネスを強化

音声広告のオトナル、在宅ユーザーに広告配信を行う『StayHome Ads』を提供開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000035509.html

ポッドキャスト制作会社に資金投入されたり、オトバンクさんがポッドキャスト制作に乗り出したり、新音声広告が出てきたということはSpotifyさんにも良い流れだったり、とポッドキャスト番組で、プロ品質の番組が増えていくという流れが、加速しそうな勢いを感じます。

問われる次の一手、独自音声配信

さて、こうなりますと、相対的に不利に見えてくるのが独自音声配信系の、Radiotalkとstand.fm。

Radiotalkはとくにマイペースで行っているように見えますが、黒字化の話はまだ聞こえてきません。stand.fmも広告展開など新規獲得に動いているようですが、定着や盛り上がりといった声もあまり聞きません。

どちらもクリティカルな一手を、準備してるかと思いますが、今年は音声広告などにお金が流れそうな勢いはとまらなそうではありますので、Voicyのように大手によりそう戦術以外で、どうクリティカルな一手を打つのかに注目が集まります。

独自配信系に対する妄想

さて、ここからは、私の妄想で、こうなってくれるといいなぁという願望も、はいっています。

stand.fmとRadiotalkの合併

MBSさんなど地上波ラジオ放送からのお金が入っているRadiotalkと、ヤフー系のお金が入っているstand.fmとでは、そんなにバッティングしないかなとも思いますが、合併したらそれなりにはインパクトはあるかと思います。

stand.fmがポッドキャスト対応

これは、ポッドキャスト製には嬉しいかもしれません。アグリケーション先が増えるわけですから、新たなリスナーを獲得できる可能性があります。

また、stand.fm側の配信者もいろいろな配信先が増やせますので、歓迎だと思います。ただ、BGMがウリのstand.fmですが、こうして自社以外に配信先がふえると、音楽の権利処理がたいへんそうな気はします。ただ、そこはふんばってクリアすれば、メリットのほうが大きいと思います。

Radiotalkが制限撤廃

ライブ30分や、収録12分、音源アップロード不可など、制限をすべて撤廃する。そうしますと、ポッドキャスト対応しているRadiotalkは、コメントやライブがあるぶん、Anchorに対抗できるプラットフォームになりえそうです。

stand.fmもRadiotalkもPCウェブ対応

音声ではないのですが、独自プラットフォームで最近のケースで、大きくトラフィックを増やした事例としてはnoteが思い出されます。

noteは、それなりにユーザーを獲得していたある時期に、ブーストさせるために、ドメインを変えたことがありました。たしかに、SEO的に、note.nu よりも、 note.com のほうが有利、ということは以前から言われていて、思い切って移行したのです。

すべてのURLが変わり、数万という被リンクがそのまま影響を保ったまま移行できるのかと、当時注目されました。結果は、今のnoteの躍進からわかります。

ですので、stand.fmもRadiotalkもどちらも、ウェブには完全に対応していません。しかし、stand.fmは、ウェブにフル対応したREC.を事業譲受しています。ですので、その技術を活かせれば、ウルトラCはあるかもしれません。

いずれにせよ、PCウェブからのトラフィック増は、もっともクリティカルな一手だと思われますが、果たして。

テレビCMなど単に新規を増やすのは逆効果

ちなみに、マスに広告をうって瞬間的にユーザーを増やすことは、逆効果です。順番が逆です。良質なコンテンツがあってはじめて、滞留してくれます。聴きたい配信がないうちに、いくら新規を集めてもとどまることはありません。そして、一度削除されてしまったアプリは、まず再インストールされることはありません。

音声ではありませんが、メルカリは立ち上げの頃、社員が出品物を買い支え、社内が落札物であふれた時期があったそうです。まずはよい商品がそろわないことには、買い手やリスナーは定着しないのです。

そこを間違えたら、それこそ未来はないでしょう。Spotifyがやった女性パーソナリティ育成プログラムや、YouTubeのクリエイターネクストアッププログラムなど、配信の質を上げる投資が不可欠なのです。

Spotify、女性音声クリエイター育成強化 ポッドキャスト番組支援プログラム「Sound Up」発表
https://realsound.jp/tech/2021/07/post-804260.html

2022年、独自配信系の動きに注目

stand.fmは決算情報がネットにでまわっていないのでわかりませんが、それでも大きく黒字化しているとは思えません。Radiotalkも赤字であることは官報で書かれています。

そうしたなか、Voicyも赤字でありつつも、次の一手を先んじて出してきました。もしかすると、RadiotalkはそのままMBSに吸収というゴールもあるかもしれませんが、井上さんのこれまでのこだわりからすると、もう一捻りはありそうな気もします。

ただそれでも、そろそろ黒字化への道筋が見えてくるような打ち手は出せないと、ポッドキャストの勢いにユーザーを取られかねない流れに抗うことは難しいように見えます。

ただ、この流れは以前からもわかっていたことですから、準備をしているはずです。

音声業界からまだまだ目が離せません。