書店数減少の流れは都心だけでなく地方にもきています。中田図書販売が運営する大型専門店「BOOKSなかだ」も同様です。
こんにちは、読書大好きカグア!です。
本記事では、富山県内に13店舗を構える(2017年8月公式HPより)地方の中堅書店、BOOKSなかだをレポートします。
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この記事の目次
BOOKSなかだとは
ブックスなかだは、中田図書販売株式会社が運営する富山県で展開する大型専門書店です。公式HPによりますと売上は42億円という規模を誇っています。
>>BOOKSなかだ
取次は日販のほか、富山県内では独占的に官報・政府出版物を販売しています。富山県内では最大級の書店チェーンを誇り、地元でのブランド力もある書店です。
広い駐車場を独自に構える店舗もあれば、ショッピングモール内に出店している形態もあり、広く地元に根付いた店舗展開をしています。
さて今回は、富山市内のショッピングモールにあります、BOOKSなかだファボーレ店へ行ってきましたので、レポートします。
BOOKSなかだファボーレ店の様子
富山市のショッピングモール内に出店
こちらが富山市内にありますショッピングモール「フューチャーシティ・ファボーレ」です。約100店舗を有する巨大なショッピングモールです。
まわりにビックカメラ・コジマや、スーパー銭湯などがあり、その周辺一角で巨大なショッピングエリアを形成しています。そこに、BOOKSなかだファボーレ店が出店しています。
>>フューチャーシティ・ファボーレ – Wikipedia
キャッチフレーズは「あなたの書斎」です。
入り口は二箇所あり、ショッピングモール内からと、このように外からとあります。こうした作りは、埼玉のイオンモール越谷レイクタウン内にあるTSUTAYAもそうですね。
ショッピングモールファボーレ側からの入り口は、CDショップと文具店を抜けて向かいます。CDショップと文具店も中田図書販売株式会社が運営します。
それでは、実際に書店内に入り、まずは最初にファーストコンタクトとなる陳列を見ていきましょう。
ファーストコンタクト~入口の陳列
正面玄関からの風景です。富山は雪国なので、入り口もドアが2段階になっています。フロアマットにも「あなたの書斎」が。
最初に飛び込んでくるのは、子供向けの自由研究などの特設コーナーです。文教向けのターゲットということがよくわかります。
いっぽう、CDショップからの入り口には、ジャニーズ特集コーナーと、絵本の特設コーナーがあり、顧客のニーズをしっかり捉えた陳列になっています。
とくにそこの陳列では、手作りのポップや企画が作り込まれていて、顧客へのおすすめ本の陳列もかなりの熱量で作り込まれています。イベントや著者サインなども多数あり、お店のファンづくりに余念がありません。
このようなファーストコンタクトを抜けますと、多くの棚が並ぶ店内となります。
店舗内はどこか懐かしく、それでいて本に囲まれるゆったりとした時間の流れる、居心地の良い陳列になっています。逆に都心部の駅ナカ書店などでよく見られる、ジャンル別のランキング陳列などはほとんどありません。
店舗内の棚や陳列はタイトル数重視
BOOKSなかだでは、圧倒的な整列感が魅力の陳列を重視しています。書棚も床から頭上までびっしりと並べるスタイルです。平積み書棚もありますが、総じてたくさんの書籍を魅せるコンセプトです。
店内は多めの蛍光灯と、書棚と床が木目の同一色でデザインされていて、明るくも落ち着きを感じる雰囲気になっています。
ビジネス書など一般書コーナーでは表紙陳列ではなく、種類数を増やす背表紙陳列を重視しています。本好きや図書館好きには、なんとも落ち着く居心地の良いレイアウトです。
いっぽう雑誌コーナーでは、背の高い書棚が使われ、頭上の棚も表紙魅せの陳列です。頭上上は背表紙置きの書店も多いですが、BOOKSなかだでは雑誌は一環して魅せる陳列です。
漫画コミックの書棚も整然としたすっきりとした陳列です。ここに来れば、まず読みたいコミックがあると思わせる充実ぶりを演出しています。
ちなみに、こちらは田端駅にありますTSUTAYAの書棚。表紙陳列と平積み書棚という表紙買い重視の陳列です。大手チェーンではこういった陳列が多いです。
都内ですと、池袋JUNK堂など専門書のイメージが強い書店が、BOOKSなかだのような背表紙&床近&平積み無し陳列を行う傾向があります。
表紙買いではなく、指名買い顧客向けの陳列で、種類数を多く置けるメリットがあります。この戦術はグループ全体でタイトル数を増やせることにも寄与します。詳しくは後述します。
書店内でのサービスも充実
店内にはしっかりとした検索サービス端末があります。たまに大型書店でもWindowsパソコンの手作り感満載な検索コーナーがありますが、BOOKSなかだではしっかりとしたシステムが構築されている印象を受けます。
入り口から一番奥にキッズコーナーがあります。比較的広めの空間がとられていて、小さな机もあり、家族で十分座れそうです。
中央の特設コーナーは4方向から見られる配置です。このときは人気作や実写化作品など話題作をしっかりアピールしていました。
大型書店には定番の椅子もあります。この他にはとくに座って読めるスペースはありません。手前は高い棚の書籍を取るためのステップです。
雑誌コーナーの上段は表紙陳列でビジュアルを重視した陳列になっています。BOOKSなかだでは雑誌コーナーは入り口から少し入ったところにあります。
それでは、漫画コーナーを見てみましょう。
コミックもタイトル数重視の陳列
コミックも三角の棚で、タイトル数重視の在庫となっています。通路が広く、かつ三角の棚で目線の高さの空間が広いため、空間が広く感じられます。
種類数が多く、例えばTVやアニメ化された作品で興味がわいたものを探しに来たとき、全巻まとめて大人買いなどもできそうです。
床の近くの段までびっしりと陳列されています。もちろんシュリンプされていますので、汚れ対策もばっちりです。
こちらは漫画コーナーの入口付近の柱。地元を題材にしたコミックの手作りポップや、作者さんの直筆サインなどが飾られています。
本棚の側面にも漫画のPRや、書店員さんのレコメンドやポップもあり、漫画好きには居心地の良い空間になっています。
そして、やさしく目に入るのは書店からのおもてなしです。
地元によりそうサービスが嬉しい
BOOKSなかだでは、なんとサービスカウンターが入口のすぐ近くにあります。検定などの申込みや予約など、書店の取次サービスを重視していることが伺えます。
また、富山県内では唯一の官報販売事業者だそうです。取り寄せなども安心ですね。
メインの入り口には店内入店前に、大きな文字で書店からのお知らせが掲示されています。書店スタッフのやさしさと温かさが感じられます。
多くのタイトル数を揃え、きれいな店内でしっかり整理された陳列。いわゆる正統派のThe書店という王道の気風を感じる運営です。
お近くのかたでまだ行ったことがないかたは、ぜひBOOKSなかだに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
地方書店の生き残り戦略を考える
富山市内の書店事情
BOOKSなかだは、地元によりそう経営で、地元のオンリーワンを目指した経営だと感じました。
地方は土地がたくさんありそうなイメージですが、じつは車で行きやすい好立地には、TSUTAYAと紀伊國屋書店といった大手も、当然のことながらひしめいています。
また、土地がたくさんあるがゆえに、採算を考えなければ(ビジネスなのでそれはなかなかありえませんが)いつでも新規参入がしやすいとも言えます。老舗でも、好立地を獲得していても、油断はできないものです。
実際、大手書店チェーンの展開を見てみましょう。
独自店とFC店で展開するTSUTAYA
富山市でも7店舗を構えるTSUTAYA。そのうち文苑堂や明文堂といった地元書店の名前を冠した店舗が4店舗あります。
>>TSUTAYA 明文堂富山有沢橋店 富山県 富山市 – TSUTAYA 店舗情報 – 店舗検索
TSUTAYAでは独自店舗という形態をとりながら、上記店舗ではタリーズも隣接するなど、複合施設化を進めることで集客を狙っています。これは都心部でも同様の戦術です。
デパート1フロアを擁する紀伊國屋書店
紀伊國屋書店は、富山市内の有名繁華街デパート内に出店しています。市内唯一のデパートの何とほぼ1フロアを専有する面積を誇ります。
>>紀伊國屋書店・富山店
繁華街やデパートのファンも取り込む戦術は、こちらもTSUTAYA同様、都心部のそれと類似しているようです。
好立地は地方でも限られる
地方では、いかに車での来易さがあるかということと、来る理由をどれだけ付加価値として付けられるかが重要です。
そう考えますと、地元の幹線道路沿いで好立地というのは、とても限られることがわかります。そうした状況下で、BOOKSなかだは、地政学的な付加価値だけでなく、官報販売などラインナップの充実で大手を迎え撃っているように感じました。
そして、ラインナップとともに重要なのは在庫の確保です。これは勝機を逃さないために小売としては王道です。ニンテンドースイッチが在庫切れで苦戦していることは皆さんもご存知のことと思います。それくらい売れるときに在庫があることは重要です。
対するTSUTAYAは、直営店とFC店とでおそらく会計が変わります。ですから在庫の流動性は限定的と見られます。
紀伊國屋書店は1店舗での敷地面積は広いですが、県内店舗数で勝るBOOKSなかだには、敷地総面積・総棚数では及ばず在庫も言わずもがな、ではないでしょうか。
つまり例えば、ある1店舗で人気書籍が売り切れたとき、おそらくBOOKSなかだでは、他店舗に在庫があれば「即日」補充が可能です。しかし、TSUTAYAや紀伊國屋書店では難しいはずで、勝機を逃さない戦術が取れる強みがあります。店内の検索システムも活きてくるはずです。もちろんイベントも多数開催されており、ファンづくりも抜かりがありません。
「あなたの書斎」を掲げるBOOKSなかだが、地元重視の戦略とブランド力を保ち、県民の書斎であり続ける限り、きっと地域で光る書店であり続けるのではないでしょうか。
整然と並べられた居心地の良い店舗に、そんな未来を感じました。
BOOKSなかだ、何気におすすめですよ。
富山市 by AERA (AERAムック) | | 国内旅行 通販
じつは、全国初の地方自治体版のアエラです。富山ってほんと手堅い戦略が得意なイメージ。さりげなくいろいろなところに、実は存在するというか。
関連情報リンク
wikiにも掲載されています。
>>中田図書販売 – Wikipedia
2010年から総坪数も減少へ。
>>書店数とその坪数推移をグラフ化してみる(2016年)(最新) – ガベージニュース
「トーハン(東京)の7月現在のまとめによると、ゼロ自治体が多いのは北海道(58)、長野(41)、福島(28)・・・」らしいです。
>>書店ゼロの自治体、2割強に 人口減・ネット書店成長…:朝日新聞デジタル
書店数と子供の学力の相関も調べています。
>>データえっせい: 人口あたりの書店数マップ
2017年で約12000店舗だそうです。
>>書店数の推移 1999年~2017年:【 FAX DM、FAX送信の日本著者販促センター 】
ちなみにこちらはコンビニの店舗数。
>>コンビニエンスストア都道府県データ
県外から来た人へは紀伊國屋書店を勧める人も。
>>地方って大型の本屋はありますか?(特に富山県の場合) – 富山県に住むことにな… – Yahoo!知恵袋
富山県と石川県で展開する文苑堂書店。こちらも地域に根ざす大型書店です。
>>文苑堂.com – 文苑堂書店 富山の本屋
書店全般の構造にも言及。
>>本屋が潰れるのは結局本屋のせいだ | yuukee | note
すばらしい。出版社も環境に対応しないとです。
>>インプレスホールディングス、電子書籍が好調 :日本経済新聞
まとめ
BOOKSなかだは、地方でありながら、その地方にとって必要な存在を勝ち取ることで生き残りを果たしている稀有な存在です。
多くの地方都市で参考になる戦略であり、また都心部でもヒントになる視点を感じることができました。
カフェと併設といったここ数年の定石をなぞるのではなく、独自の工夫と販路を信じて我が道をいく書店に、注目が集まる日も遠くないかもしれません。
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