先日もCPT2021を制した梅原さん。40歳になる今も最高峰のトッププレイヤーとして君臨するプロゲーマーの梅原大吾さんの本を2回読みましたのでレビューします。感想としては、まさに生き方や考え方、そして豊富なエピソードと読みやすい文体で、とても良い内容でした。
この記事の目次
レビュワーの立ち位置や背景
- 2児の父・男性49歳
- フリーランス歴24年目
- ゲーム実況系ユーチューバー
- 格闘ゲーム歴なし
格闘ゲームはプレイしたことはありません。なんとなくはどういうゲームか知っている、という程度です。いっぽうで、梅原さんと同じく格闘ゲームでプロとして活躍されているときどさんの書籍を読んだことがあります。
梅原さんの「1日ひとつだけ、強くなる。」は、数年前に一度読み、ときどさんの本を読んだ数カ月後に、再び読み返した、という感じです。後述します目次にぴんときたかたには間違いなくおすすめです。
なおすでに本書は、紙本では、中古本も品薄になっていて、楽天では紙の本にプレミアがつくほどになっています。電子書籍であればすぐに読めますので、おすすめです。私はGooglePLAYブックスで購入しました。
40歳をすぎてもなおトッププレイヤーとして活躍しつづける梅原さん。
>>対応力の高さで「CPT 2021 日本大会3」を制したウメハラ選手、筆者との対戦も – 岡安学の「eスポーツ観戦記」(71) | マイナビニュース
先日の試合でも伝説級の試合をなんども展開し、おとろえを知りません。そんな梅原さんの思考や考え方は多くのスペシャリストに参考になると思います。
1日ひとつだけ、強くなる。 世界一プロ・ゲーマーの勝ち続ける64の流儀 | 梅原 大吾
本書におすすめの人向けレビュー
ゲーム好きを生き方にしたい人
ゲームが大好きだけど親に反対されている、そんな若い人にも本書はおすすめです。本書では、梅原さんの強さが書かれていますが、それは私が解釈するに「生き方」の違いだと思います。
1回2回の勝利ではなく勝ち続けること、梅原さんはそこにこだわっています。実際、勝ち続けた回数でギネスももっていほど。
ではなぜそれほどまでに勝ち続けられるのか。それは、勝つことが目的ではなく、ゲームとどう向き合うかという「ありかた」まで考えているからだと本書は教えてくれます。
「ゲームに関わる仕事につきたいけれど親に反対されている・・・」そんな人に、どうやったら稼げるのか、どうやったら親を納得させられるのか、という短期的な視点でなく、人生という広い視野で考えることの重要性を本書では教えてくれ、きっと希望を見いだせると思います。
いっぽうで、本書を読んでも背中を押されないのであれば、それはまだ熱量が足りない証拠。もっとじっくり人生を考えてみるのも良いかもしれません。それくらい、本書では伝えたいことがシンプルに書かれ、自分との差を見せつけられる気がします。
実際、梅原さんはプロゲーマーとして成功する前に、雀荘での仕事、介護のお仕事など、いくつもの仕事を経験し、それぞれのエピソードも本書では語られています。視野を狭くもたない、苦手なものにもあえて飛び込む。
そんな柔軟でニュートラルな姿勢からは、学びはとても多いです。
目標を達成してしまったビジネスマン
目標を達成すると達成感で、モチベーションが落ちてしまうという経験はありませんでしょうか。ひたすらに何かにうちこみ続け、ただそれを手にしてしまったならば、とたんに燃え尽きてしまう。
また、経営者やリーダーなど孤独を感じやすいポジションのかたは、そうした孤独感からモチベーション低下を感じることがあると思います。そうした、ビジネスマンに本書は、モチベーションの保ち方や目標に対する考え方を示唆してくれます。
本書の気に入っているところは、梅原さんのノウハウだけでなく、彼の経験にもとづくまわりの出来事も事例として含めてくれているところです。
動画の配信で人気があることや、「ゲームをやっているところを見たい」とネット上で言われることがうれしくて、ゲームに対する向上心を失ってしまう人がトッププレイヤーの中にもいる。
説得力が増しますし、わたしは直接的に「こうするといいよ」と言われるより、こうしないほうがいいよ、と言われるほうが自分ごとにとらえられる天の邪鬼なので、両方の書き方で書かれている本書はとても好きです。
ゲームが仕事になるなんて羨ましい、そう言われることも多いプロゲーマーですが、それでもやはり飽きとの戦いはあるようです。それを梅原さんはいかにして克服しているのか、本書でしっかりと書かれています。モチベーションを維持したいビジネスマンが、ストイックに仕事に打ち込める、そんな人に本書はとてもおすすめです。「格闘ゲーマーだって正直飽きる」の節がおすすめかと思います。
アマゾンのレビューでも、本書でいうゲームを、自分自身の仕事に置き換えても、すべて通用するとの高いクチコミ評価もあるほどです。わたしもそう思います。
一歩がなかなか踏み出せない人
いろいろなことを考えてしまい、なかなか最初の一歩が踏み出せない人がいるかと思います。そういったかたは、勝つ人の思考はこういうふうなのかと知ることで、自分自身への振り返りに役立つと思います。
本書でも行動力の重要性に書かれていますが、そこで行動力のない人のことをこう言っています。
行動力がない人の共通点・・・「リスク」ととらえるものが多すぎる、目先のことしか考えられないので異常に行動が小さくなる。
わたしの身近にいる人で、ふだんからとても慎重なかたがいます。たしかに、慎重であることと行動力がないことは紙一重かもしれません。ただ、行動して結果を出し続ける人の思考はこうなのか、と理解することで、もし自分自身にもっと行動力をつけたいと悩まれているのでれば、本書はきっと役立つはずです。
呼吸をするかのように、日々行動することを意識しています。そんな生き方もあるのかと、新鮮な気持ちになるかと思います。
さらに味わい深くなる読み方
本書でも出てきますプロゲーマーの「ときど」さん。かつて、梅原さんをやぶったこともある有名プロゲーマーです。そのときどさんも著述をされています。
東大卒プロゲーマー (PHP新書) | ときど
こちらは、ときどさんがプロゲーマーになるまでの葛藤を吐露した内容になっています。勝ち方の考え方も書かれていますが、本筋は人生の選択や自分とどう向き合うかが、テーマです。
そしてこの本に梅原さんにアドバイスをもらうエピソードが描かれています。ですから、ときどさんの本を読んでから、梅原さんの本にかかれているときどさんのエピソードを読むと、なるほどこういうことなのかーと、とても味わい深く読むことができます。
ときどさんの本も、人生で自分とどう向き合うか、というテーマの本として、おすすめです。まだのかたは、ぜひ一度読まれてみてください。面白いです。
・・・というわけで、本記事の最後にわたしの個人的な本書の感想レビューを書きたいと思います。
1日ひとつだけ、強くなる。目次
はじめに
GAME01 視点を高くする ストリートファイターZERO3全国大会、17歳
- 勝負は「ポイント」を押さえた人間が勝つ
- 期限がある勝負ではこだわらず、やり方を変える
- ゲームの「勝ちパターン」の変化は生物の進化、淘汰に似ている
- インターネットは圧倒的速さで「格差」を解消した
- 東大卒プロ・ゲーマーときどの勝ち方
- 9割のプレイヤーが、場面ごとの最適解を求める。僕は、対戦全体を見る
- 成果は各場面の「勝ちの総計」ではない
- 「うまくいかなかったから修正する」ではもう遅い
- コピーされる武器、コピーされない武器
- 視点の高さが同じなら、「パターン記憶力」が勝負を分ける
- 自分の勝ちパターンを押し付けるだけでは、トッププレイヤーにはなれない
GAME02 感情を支配する Evolution 2003、22歳
- 動画再生2000万回以上の「背水の逆転劇」より印象深い試合
- アメリカで初めて受けた「アウェーの洗礼」
- 勝利に感情は不利。恐怖も、焦りも、興奮も
- 腹を立てるのは「相手をコントロールしたい」気持ちがあるから
- 苦手な相手もゲーム感覚で攻略すればいい
- 嫌な奴は、弱い奴。だから心を開いてみる
- どうにもならないことは、受け入れる。それが強さへの近道
- 劣勢になったら、とりあえず一歩引く
- 圧倒的に不利な状況からの逆転劇が可能な理由
- 負けるときも、自分の戦い方で負ける
- 弱い人ほど目先の損を我慢できない
- 不確実な圧勝より、60対40で着実に勝つほうが強い
GAME03 成長とは変わること 闘劇2004、23歳
- なぜ1回戦で負けたのか。いつも、負けには理由がある
- 「勝ち」だけを意識する取り組みでは強くなれない
- 「気分転換にやってみるか」そう思ったら、驚くほど勝てた
- リスクを負わない姿勢が一番のリスクになる
- 行動力。見る力。聞く力。この3つが「強さ」の3要素
- 読みや直観は行動に移さないと鈍る
- 人のアドバイスはまず100%信じてみる
- 「自分が世界一」と思っていた僕が素直になった理由
- 正しいことを積み重ねた先の個人差。それが「個性」
- その「本気」を疑え。本気で勝ちたいなら妙なこだわりを捨てろ
- 大失敗した人の話は聞く価値がある
- 「お前に足りないものは『聞く』ことじゃ手に入らないよ」
- 「安心」も「不安」も正しい分析には不要
GAME04 飽きても続ける プロ・ゲーマーになる、28歳
- 「やっぱり俺にはゲームなんだ」この諦めは、嫌な感じではなかった
- 「疲れていても頑張れるのが強者」──これは明らかな間違い
- 格闘ゲーマーだって、正直飽きる
- 1日ひとつだけ、成長をメモする
- 目的が「優勝」になると、優勝した時点でその人は急激に弱くなる
- 成長できたとしてもむやみにハードルを上げない
- 自分にしか分からない小さな成果を「自信」にする
- プロとして、業界に貢献する
- 燃え尽きるのはアマチュア。同じ姿勢で走り続けるのがプロ
- 勝つだけで人生は変わらない。情けない自分、ズルい自分はチャラにならない
- 負けることよりも「発見がないこと」のほうが怖い
GAME05 「ここ一番」で勝つ MADCATZ UNVEILED JAPAN、32歳
- 「絶対に負けられない勝負」の戦い方
- 僕が認める数少ないライバル、インフィルトレーション
- 「勢い」のあるトッププレイヤーにどうやったら勝てるか
- ゲームセンターから動画へ。強くなるための「常識」が変わった
- 勝負には必ず「勝つ根拠」を用意して臨む
- 仮説と検証の先に勝つ根拠の「大黒柱」が立ち上がる
- 開始5分前まで「勝つ根拠」を探した
- 戦略を練るときは、キャラの「強い部分」を書き出す
- ダメージを受けても「意図したこと」なら焦らない
- 「何かあるはず」と思って探すと必ずどこかに可能性がある
- 飽きずに試し続けられる。それが僕の才能
- 日本のゲームコミュニティは世界一の環境
- やれることを全部やった。負けたら、凄い発見がある
GAME06 才能を越える 今の僕が思うこと
- 成功するかは別にして、やりたいのであれば、やるべきなんじゃないか
- 不向きなことをやると気づきがある
- 10代の頃は、どれだけ勝ってもずっと不安だった
- 「普通」への取り組みはまだまだ続く
- 梅原大吾 主な戦歴
奥付
個人的な感想は「まさに神や・・・」
梅原さんのプレイがなぜすごいのかを本書ではおしげもなく書いています。とはいえそれを読んだからといって、簡単に真似はできません。
実際にプレイはしなくても見ていて面白いプレイをされるのが梅原さんの魅力ですね。
>>梅原大吾さんの1日ひとつだけ、強くなる。を読んで。 | 株式会社Cluex’s Blog
こう書かれる理由が本書では、はっきりこう書かれています。
プロだから
梅原さんはプロならば見ている人をわかせるプレイをするべきだと語っています。ただ勝つだけで心に残らないプレイヤーとは何が違うかも、語られています。そういう視座の違いに、一言一言驚かされます。
ものすごく正論なんですけど、それを語って、違和感のないところが梅原さんの凄いところですね。
さて、最後に梅原さんの珠玉の一言が掲載されています。これをさらっと書けてしまうことに驚きます。神かよ・・・。梅原さんの生き方にシビれました。
個人的にはこうした職人的なストイックな生き方は、嫌いではないので、考え方は言い回しで「おお!」とうなった本は初めてでしたので、とても良い読後感です。
電子書籍で買いましたが、マーカーしたい箇所がたくさんだったので、いずれ紙の本も買おうと思います。
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さて、読後、ふと目の前にあるエナジードリンクを見ると・・・
野獣を解き放て
梅原さんが「ザ・ビースト」の愛称で呼ばれてことと重なります。なんという偶然。
神がかった本書の、まさに運命的なものを感じた一瞬でした。
わたしも、1回の勝ちや成果ではなく、成果を出し続ける「生き方」や「視点」について、もっとよく考えてみようと思いました。
おすすめです。
1日ひとつだけ、強くなる。 世界一プロ・ゲーマーの勝ち続ける64の流儀 | 梅原 大吾
関連情報リンク
梅原さんのYouTube動画チャンネル。
>>Daigo the BeasTV – YouTube
梅原さんの出演されたテレビ。
>>ダイゴとDaigo ウメハラ出演回とそれすら利用するときどの貪欲さ – YouTube
羽生名人も、神がかっている人ですよね。たしかに、AIとの戦いは昨今注目。
>>AIと向き合い、ともに歩む将棋界。リコーと日本将棋連盟が挑戦する新しい仕組みとは? | BUSINESS INSIDER JAPAN
こういうこともやられているのが凄い。
>>悩みどころと逃げどころ 感想 ちきりん,梅原 大吾 – 読書メーター
リアタイで見たかったー。
>>ときど『情熱大陸』&梅原大吾『プロフェッショナル』 2番組を比較して見えた、プロゲーマーの真実|Real Sound
まとめ
ときどさんの本を読み、ふと思い出して再び読み返した梅原さんの本。当時はわからなかった言葉やくだりも、少し理解が深まったような気がしました。
それ以上に、ときどさんにかけた言葉の重みが、本書を読むと本当によくわかり、読書の新しい広がりを感じることができ、とても嬉しかったです。
ゲーム好きならば間違いなくおすすめ、ゲーム好きでない方もぜひ読んでほしい、そんな1冊です。
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