教育現場へのChromebook導入は賛成です。
追記:2016年8月22日
こういうことがあると、どうしてもマイクロソフトと比べちゃうと、なかなか普及は難しいのかと感じます。
>>グーグル、「Windows」「Mac」「Linux」向け「Chrome」アプリのサポートを段階的に終了へ – CNET Japan
関連リンク
・デメリットはたった2つ、クロームブック(デル)CB1C13の評価と感想
・国内で購入可能なChromebook:Amazonストア
有名マーケッターの永江さんが佐賀県の事例について言及されていました。
>>誰か佐賀県教育委員会にChromebookというものを教えてあげてくれ | More Access! More Fun!
大筋同意で、ただ教育現場では、大量のアカウント管理。そのフォローに伴うコストやマイノリティへの配慮、卒業後のアカウント管理、予算申請の特殊性(時期や審議の数が半端無く多い)など、教育現場ならではの課題があり、一括りに議論できないところが難しいところです。
ですので、長年教育現場に携わってきたものとして、補足的に、教育現場ってこうなんだと少しでも理解が広まれば良いと思い、まとめました。
ご参考になれば幸いです。
この記事の目次
Google PlayブックスならPDF、EPUBも読める
いわゆる電子書籍や電子教科書ですが、PDFかEPUBといったフォーマットが考えられます。これらはすでにオープンな技術仕様ですので、DRM(著作権保護)がかけられていないかぎり、ビューワーさえあれば端末を選ばず、読書が可能ですので、現状ではベターな技術採択となるかと思います。
いわゆる電子教科書やeラーニングでは、凝ったインタラクティブな仕掛けのあるもの、FLASHなど独自仕様の高度な教材、DRMガチガチの電子書籍など、ビューワーや環境が変わりますと、読めないものが多数存在するのが現状なのです。
追記 2015年3月6日21:00
電子書籍かいわいの方々から、ソーシャルDRMは向かないというご指摘を頂いております。ほんと難しいです。
>>ろす@電書ちゃんねるさん: “DRMまわりの論考は随分荒いなあ。教科書は著作権の固まりみたいなもんだぞ 。
>>犬子蓮木@Kindle本発売中!さん: “ソーシャルDRMは向かないと思うなー 生徒がコピーした本が世に出回っちゃったら注意だけじゃすまないし 2ch炎上とか発生しちゃうかも。
・DRMフリー
・オープンな技術
ですから、上記仕様が使われているかどうかが採択の基準になると思います。
DRMフリーは世界的な流れ
国内の電子書籍ストアでも、DRMフリーの書店は登場しはじめています。ですので、これらの状況や流れを考えますと、上記の採択基準は、それなりの期間は陳腐化しないと考えられ、長期的視点がかかせない教育という分野においては、重要な点かと思います。
>>ソーシャルDRMに合本機能――JTBパブリッシング「たびのたね」はこうして生まれた – ITmedia eBook USER
>>明治図書出版はなぜDRMフリーの電子書籍販売に踏み切れたのか――担当者に聞いてみた – ITmedia eBook USER
スイッチコストと陳腐化リスクをどこまで考えるかが、採択においてはとても重要です。
違法複製はソーシャルDRMで解決
ガードを堅くすれば端末に制限がかかる、というロックと使い勝手は相反するものです。ですが、世界的な流れは、使い勝手を重視して、ゆるやかな制限にしよう、というのが世界的な流れです。
世界的ヒットとなりました小説「ハリーポッター」は、ソーシャルDRMを実装した、初の大規模事例として有名です。
>>「Harry Potter」シリーズ電子書籍版のEPUBファイルで使われているウォーターマーク技術は蘭BooXtream製
これは、購入者本人の情報を電子書籍に透かしとして付加することで、拡散させると自分の個人情報まで拡散するため、抑止効果が期待できるというものです。発行時にサーバーに負担がかかる技術的課題もありますが、学校など小規模利用であればほぼ問題ないかと思われます。また、ハードウェアの進歩により、この問題も解決しつつあります。
高額機器購入と急な通達
今回の件は、そもそも高額機器の購入から物議を醸していたように思います。教育現場では、少数派への配慮が欠かせないため、教育負担は最小限に抑えるにこしたことはないです。そういう点では開始から順風満帆ではなかったと思います。
>>佐賀県教委 高校授業用パソコンの「教科書」削除を指示 1年のライセンス契約 ― 当初の連絡は「口頭」、授業開始の2か月後|政治ニュース|HUNTER(ハンター)|ニュースサイト
もちろんある程度のリーダーシップは必要だとは思いますが、それが成果を上げなければ、こう書かれてしまっても文句は言えないでしょう。(上記記事より)
目的は「先進的ICT利活用教育推進事業」を進めることであって、生徒の学力向上ではなかったということ。県教委と業者が組んで、税金と生徒を食い物にした形だ。県教委の上層部に、腐敗があるとしか思えない。
そして、急なアンイストールの通達。電子書籍業界でも、電子書籍はライセンスを買っているだけで実質無期限レンタルである(例:Kindleなど)という認識は広まっていないなかで、一般に向けた急な通達は波紋を呼ぶことは不可避だったでしょう。
結果論になってしまいますが、本プロジェクトにおいては進めるにあたって、以下の配慮が不可欠だったとは思います。
・先進的ICT利活用教育推進事業に、ぜひ皆さん協力してください。
・期限付きなので、終了後のフォローはXXXとします。
・あともう少しで終わりです、皆さん気持よくお別れしましょう。
・みんな、本当にありがとう!成果報告は国のXXXという事業に役立つよ!
導入ベンダーがどういうフォローや配慮をしたのかはわかりませんが、関係者全員が少しでも受講者目線の気持ちを持っていれば、このような事態にはならなかったのではないかと憂慮します。
ただ、その長期的視点で提案があったとしても、結局は誰かの一提案に「賭ける」ということにはなるはずなので、その判断の正当性はその当時は誰にも査定できないとは思います。ただ、プロジェクト自体はわかっていたわけですから、現場の方々のご苦労も察するところですが、私自身も何か出来ることはなかったかなと歯がゆく思いました。
高等教育機関ではクラウド移行が大きな流れ
多くの大学ではすでに、Google Apps for Education を利用し、学生がGmailなどのGoogleのサービスを利用しています。
もちろん、卒業すると当然そのアカウントは使えなくなります。卒業生が1人でも混じっていますと、在校生すべてにG-Mail内広告表示などの義務が発生します。ですので、必要なデータは在籍中に、自分自身のGoogleアカウントやDropboxなどに移すような指導やフォローは必要になります。
>>Google Apps for Educationにおける卒業生の取り扱いについて – Google プロダクト フォーラム
すでにEvernoteをカリキュラムで前提に導入している学校もあります(私学なので公立向けには適さないかもしれませんが)。
>>予習復習はクラウドで 品川女子学院、教職員と生徒に「Evernote Business」導入 – ITmedia ニュース
すでに、Microsoftのオフィスでさえクラウドで運用する時代です。学生は無料で使えるディスカウントプログラムが存在します。
>>Office365サービス(学生専用)開始のお知らせ|大東文化大学
Chromebookのデメリット
いっぽう、Chromebookの弱点は、データが持ち運べないことや、ネットがないと使えないことです。ただ、以下の2点は問題としては、低価格や安全性というメリットの前には小さいことだとは思います。
・データの持ち運び<<これはセキュリティ上、そうしたほうが逆に良いでしょう。
・ネットがないと使えない<<これは永江さんのご指摘通り個別フォローで問題ないでしょう。
あまり話題になっていないのが、画像の扱いです。画像については、保存等はできるのですが、コピー&貼り付けなどもアプリによっては出来ません。Picasaなどに一旦アップしてクラウドをテンポラリ代わりにしますと使えます。ですので、ビジュアル的な資料を作るパワポの授業などで慣れるまでは、その1工程が煩わしく感じるかもしれません。多くの教材や教科書はスタンドアローンのオフィスやWindows中心に書かれているのが現状なのです。
もしそれに対応しようすれば、教材作成コストがここで大量に発生することになり、それを誰が負担するのかという議論が持ち上がります。
教育上はじつはここが一番リスクなのです。教育現場や資料作成においては、画像は相当使います。もちろん、そのWebサービス内で完結すれば、問題ないですが、ただ例えば、Cacooからオフィス365に画像貼り付けができるかというと、試さないとわからないです、などというのが現状なのです。
文字のコピー&貼り付けは、ほとんどのケースでクリアされているようですが、画像の扱いのシームレス化はどうも難しそうなのです。
また、Chromebookは割りきって使うものという見方が多いでしょうから、今後も技術進歩があるかというと少々疑問です。ですから、ここはケーススタディを貯めるくらいのリソースは確保して、導入することになるでしょう。
追記 2015年3月6日 アプリによっては画像のコピペはできるとのご指摘をうけ、追記しました。
結論
・卒業後のデータ移行のフォロー
・カリキュラム上、画像の取り扱いをどうするか
の2点さえクリアできれば、クラウドはセキュリティ面でも、コスト面でも、Chromebook導入はメリットのある環境といえます。まして、ビジネスの現場がどんどんとクラウドになっている現状においては、教育現場も変わっていくことが求めらるはずです。
ただ、そのときに、上記のようなフォローな教材の更新を誰が担うのか。じつは、そこが一番の課題であり、高いけどサポートがあるなら仕方ない・・・とベンダーの提案を飲まざるを得ない現状があります。ベンダーでもどこまでサポートされるのかは疑問ですし、もちろん協力的なところも多いとは思いますが、営業目標の前には後手になりがちなのだとは推察します。
また、教育予算については、多くの人の決済を通過するとき、国内企業という安心感は、まだまだ大きいように思います。
クラウドは低コストで済むぶん、そういうフォローが必要なのが現状なのです。国内の教育現場でIT化が進まない問題は、じつは根が深いのです。
関連リンク
・国内で買えるChromebookストア:Amazon
追記 2015年3月7日
Amazonの仕組みを使うと良いといったご意見もあるようで勉強になります。ほんとうにいろいろあるものですね。
私がChromebookの画像の扱いについて否定的を見える件について。これは、そういう操作を解説した教材や教科書が存在すればここまではこだわらなかったかもしれません。教育機器はそれ単体で教室で使うものではありません。また、ボタンのUIがちょっと違うくらいでしたら、そこまでこだわらなかったとは思います。
ただ、もし仮に入札当時、Chromebookが土俵に上がっていても、教材、習得のしやすさ、アカウント管理やサポートなどのコスト、情報の多さ、教えやすさ・・・総合的に見るとどうだったでしょうか。おそらく多くの支持を得られるのは、予算という下支えがあった当時であれば、やはり高額であってもWindowsではなかったかなと推察します。
生徒や父兄、教育委員会、そしてみんなのお金を使うという目、多くの人たちがかかわる中で、長期間にわたり、何か新しいことを強力なリーダーシップをもって押し進める難しさは、とても言葉では言いがたいものです。相当の胆力が必要とされます。そういう点では、どうしても無難なものや理解が得られやすいものに、収まりがちなのも仕方ないのかなと察します。ただ、アンインストールの突然感については前述のように、何か対策は出来たのではないかとは思います。逆に、著作権やライセンスについて生徒と一緒に考えられる良い機会だったと思いますが、それを活かせなかったとみられる今回の騒動は残念に思います。
なお、管理のしやすさやクラウドについての、理解が広まれば、海外のように、教育現場でChromebookが普及するであろう未来は私も同意するところです。クラウドはほんと生徒も先生もほんと便利ですよね。
追記 2015年3月6日
2014年12月の記事みたいですが、私もおおむね同意ではあるんですよ。デメリットはあってもメリットが上回る、というか。
>>Chromebook が売れている:アメリカの教育市場でトップに立ったようだ! | Agile Cat — in the cloud
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