お金の使い方、ほんと難しい。無料通話アプリのcommが終了だそうです。
本記事は、2015年2月28日公開の記事です。
>>comm(コム)/2015年4月21日(火) 15:00をもちまして本サービスを終了
>>魚拓:(cache) comm(コム)/もっとつながる、高音質な無料通話アプリ
LINEのベッキーTVCMに対抗して、女優の吉高由里子さんを起用したことは、まだ記憶に新しいですが、じつはすでに縮小も報じられてたのですね。
ということで、いろいろとまとめてみました。
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この記事の目次
無料通話アプリcommの歴史
2012年10月 吉高由里子を起用したTVCMで華々しくスタート。約10億円を会員獲得のプロモーションに投じる。日本、欧米、アジアなど204の国と地域で配信。※ソース:日経BP。
DeNA「comm」CM発表会、吉高由里子が高音質な無料通話をアピール – ケータイ Watch
新卒3年目と守安社長から紹介され登壇したのは、comm戦略室 室長の山敷守氏。山敷氏は、調査会社の結果などから、無料通話へのニーズが依然として高いことが開発のきっかけになったとし
TVCM動画はこちらで多数見つかります。
>>comm 吉高由里子 – YouTube
2012年12月 開発のエースを含め70名体制の開発へ。
無料通話アプリ「comm」、開発の舞台裏:日本経済新聞
comm戦略室の室長を務める山敷守(25)が率いる。東京大学を卒業後、DeNAに入社した山敷はまだ新卒3年目だが、ヤフーとの事業提携などを成功させた手腕を買われ、開発チームの筆頭に抜擢された。
2013年1月 DeNAが新ロゴを発表。
吉高由里子 ネガティブ思考から脱皮 美輪明宏から「ポジティブ思考」学ぶ ― スポニチ Sponichi Annex 芸能
2013年6月 事業縮小を発表。
>>【特報】DeNA、「comm」事業を縮小へ:日経ビジネスオンライン
様々なてこ入れ策を講じた~現在の会員数は約670万人程度にとどまっているものと見られる。
2015年2月 プライバシーについて炎上。※サービス開始からあったそうです。
>>【大炎上】DeNAのLINE対抗、無料通話アプリ『comm』が危険すぎると話題に – NAVER まとめ
commで「あや」「ひろ」などのありがちな名前で検索をかけると、本名と顔写真のリストがずらっと手に入る/知らない人が勝手に友だちとか言ってきたよお。
2015年2月28日 サービス終了を発表。
>>DeNAの無料通話アプリ「comm(コム)」がサービス終了へ – ねとらぼ
ターニングポイント・初動の判断
リリース直後、「アップストア」や「グーグルプレー」といったアプリストアのランキングでcommが急上昇。無料アプリ全体のトップ10に食い込んだ。※上記日経記事より
このことを受けて、開発体制70名に増強、10億円規模のTVCMプロモーションを、代表取締役社長の守安氏が決済します。
それを受けて、11月14日に記者発表、17日にTVCMが開始されます。そこで、「年内1000万件」という目標を掲げたそうです。
・スタンプの充実。
・モバゲーとの連携は考えない。
モバゲー事業を統括する執行役員兼ソーシャルプラットフォーム事業本部長の松井氏「自信がなかったら始めていない」とのコメントを残しています。また、社長の守安氏は当時のインタビューで「実名登録にはこれからもこだわっていく」としています。またLINEとどう戦っていくのかについては、LINEは日本と台湾で強い、他は・・・とし圧倒的シェアをとっているところは世界的にもないとし、具体的な言及を避けていました。
ただ、じつはここで、発表当初と変わっていることがあります。10月23日の発表では、以下のように語られていました(ソース:ケータイ Watch(インプレス))。
「将来的には「Mobage」「ビッダーズ」などDeNAが運営するプラットフォームとの連携を図っていく方針」
すでに不協和音が奏でられていたようです。また、モバゲーの経験があっただけに、数字の読みを多く見てしまったのかな、とも想像します。
0ベース思考—どんな難問もシンプルに解決できる | スティーヴン・レヴィット, スティーヴン・ダブナー, 櫻井祐子
概算としては20億円
開発は当初20名体制。2012年10月から2015年4月までのサービスとしますと30ヶ月。開発に半年(ソース:【法人・個人のケース別】1つのアプリを開発するのに必要とされている期間 | U-NOTE【ユーノート】)としますと、投じた額は、これくらいでしょうか。2013年に縮小が発表されていますので、それを半分と計算しています。
20名x100万円x6ヶ月=1億2千万円
70名x100万円x8ヶ月=5億6千万円
35名x100万円x11ヶ月=3億8千5百万円
プロモーション費用 10億円
合計 20.65億円
第17期第3四半期のIR資料によりますと、営業利益で200億円ほど計上されていますので、まあ想定範囲といったところなのでしょうかね。キュレーション2社の買収50億円に比べれば大したことはない感じでしょうか。早めの撤退決断が逆に評価される、そんな材料が用意できるか広報の手腕に注目です。ただ、個人的にはその開発力を他に向けられなかったリスクのほうが大きいとも危惧します。ほんと今、人材の確保は難しいですから。
>>DeNAがiemoとMERYの2社を計50億円で買収、キュレーション事業に参入 – TechCrunch
>>IR・投資家情報 | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】
敵の覚悟をどう読むか
LINEがブレイクしたときの考察記事として、当時ブレイクしたのがこちらです。スマホ普及率10%未満のときにTVCMを打つ気概と考察まで含めて、名エントリーです。
>>数年前に「LINE」を思い付いていたとしても、やらなかったであろうプロデューサーのお話 | サイプロ~とあるサイトプロデューサーのブログ~
結論から言うと、数字を作っている最中に「厳しそうだな・・・」と思い、提案まで持っていかなかったと思います。その理由をいくつか。
そうなんです。
おそらく相当の覚悟と決断だったと思うんですね。そして、それは投じた額も相当だと思うんですよ。それに対抗するにはおそらく20億円の覚悟では難しかったのだろうと、今回の撤退からは感じます。相手と戦うためにどう覚悟の量を見極めるか、ほんと重要だと思いました。
LINEの戦い方の特殊性
ただじつは、LINEは今までのネット普及の定番アプローチとは異なるアプローチで戦っています。こことどう戦うのかも重要だったと思います。
ネットの世界ではよく、ギークな人が使い始め、アーリーな人が飛びつき、何かのきっかけで一般にも広がるという広がり方をします。そして、そこで戦うときには、先行者に対してフォロワーはテクノロジーやオープンソースで戦うことが定石なのです。
マイスペースに対抗して、テックやオープン性で対抗したFacebook。ヤフーという手動リンク集に対し、テックで対抗したGoogle。アップルというデザインやプロダクトのiPhoneに対抗して、オープンソースや低価格で対抗したAndroid。
しかし、LINEは当初から異なる戦術でした。
ギークな人たちがツッコミを入れるほどのセキュリティ、第1線のタレントを使うTVCM、スタートからマスを狙いにいく、他IT企業がかつてほとんどとったことの無い戦術で当初から戦っていたのです。
いきなりにマスを狙う
この戦術は、ブログで後発だったサイバーがアメーバでとった戦術に似ています。
テックよりのはてなブログ、著名ブロガーやホリエモン効果でブレイクしていたライブドアブログ。そこに対抗するには、違う層を取りに行く必要があって、そこで、有名タレントを招聘しとにかく膨大な量のブログを書いてもらうという戦術です。その正当性は現在のシェアからも間違っていなかったと言えるでしょう。ただ、これは3番目の座席を狙うために使った戦術なのです。それをLINEは最初からやってきたのです。
つまり、戦術でも、そうとうの覚悟と大胆な発想が必要だったのです。たとえばモバゲーに実装してゲーム実況に使えYouTuberにガンガン使ってもらうなど。LINEと同様のTVCM、ゲームの追加という定番の戦術では、想定以上の戦果は得られなかったと解釈できるかと思います。
もはや、同じルールで戦うのは厳しかったのではないかと。あくまで結果論ですが、現実は厳しいですね。
ルールを変える思考法 (角川EPUB選書) | 川上量生
手の内を見せすぎた
commは、たしかに高音質で、それはテックだったかもしれません。しかし、オープンソースなど何か技術的なトピックはなかったように記憶しています。また、ユーザー数が増えることによる音質低下も当時問題になっていました。おそらく開始当初の炎上への対応で後手後手になったのではないかと察します。
ただそれも、LINEも当時はセキュリティには言及されていて既知だったはず。さらには、LINEのスピード感のある展開が差を広げることに・・・。仮に同じ覚悟の量だったとすると、残念ながら追いつけることは無かったわけです・・・。通話アプリは、相手がいて初めて成り立つので、相手がLINEだったらLINE入れちゃいます。高音質とかスペックは入る余地は無いんです。データをどう読むかってほんと大事です。
そして、上記の記事のようなことまで公開する必要はあったのかという点。そもそもDeNAは公開企業であり、財務などは公開、対してLINEは非公開企業ですから、DeNAはもっと相手の不意を付くような戦術でも良かった気はします。
もはや定番戦術は見直す時期に
スマホがこれだけ普及し天井も見えてきた昨今においては、もはや定番戦術も見直す時期に来ていると、そう考えさせらました。大量の資金が当時られ、今まで以上に普及のスピードが増した昨今においては、その見極めや戦術の創造性が、より重要性を増してきたといえそうです。もちろん、今回の件も思いついたとしても2年前の当時に、斬新な手で舵を切れたかというとやっぱり難しかったとは思います。が、今回の件でいよいよ変わるだろうなと思うわけです。
いわゆるキャズム理論をテック界隈では標榜することが多かったものですが、もはやそれも見直す時期に来ているかと。今回の件はそういう意味で私にとっては、IT戦略における変化の潮目を感じさせる発表でした。
戦略に創造性を。
サービス終了は4月とのことですが、DeNAの皆様、本当にお疲れ様でした。新しいサービスに期待しています。このメンバーがまた他のサービスに移り新しいサービス拡充が図られればそれはすごく楽しみ。(^^) がんばってください!
経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ) | 三谷 宏治
ゲーム・チェンジャーの競争戦略 ―ルール、相手、土俵を変える | 内田 和成
異業種に学ぶビジネスモデル (日経ビジネス人文庫) | 山田 英夫
追記 2015年3月2日19:51
・運用コストとのご指摘がありましたが、たしかにそのとおりですね。イニシャルを考えますと、もっとかかっていたと見て良いかと。
・考察なの?という点は、ごもっともです。ネットの連続性や他との比較など掘り下げはまだまだで、単なる後出し意見の域を出ないかもしれません。考察力については今後の課題とさせてください。
追記 2015年3月20日
LINEPAYのTVCMもはじまりましたね。大物タレントを起用して速攻TVCM、そしてZOZOなど大型モールもしっかり取り込んで攻めてくる、このスピード感はハンパないですね。
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