Spotifyが独自にポッドキャスト配信をできる機能をニュージランドでテスト中だそうです。これが世界的に実装されれば、Anchorとカニバるわけですが、それでもSpotifyが独自配信にこだわるのには理由がありそうです。
この記事の目次
Spotifyが独自のポッドキャスト配信をテスト
音声広告大手オトナルの八木さんが、2022年7月2日にツイートをしていました。
Spotifyアプリから直接ポッドキャストを配信できる機能は、ニュージーランドで6月にこの機能は開放されている模様。このツイートのポストを見ると、どんな感じの機能かわかります。https://t.co/jC5NIENZVc
— 八木たいすけ@オトナル(デジタル音声広告) (@pyusuke) July 2, 2022
紹介されている記事と動画をみますと、たしかにふつうにSpotifyの画面から収録画面へシームレスへいき、収録後に波形の編集をして、配信するといった流れが動画で紹介されていました。
こうなりますと、Anchorと完全に競合するのではと思うのですが、グリーンルームのように統合してしまうのか、注目が集まります。
機能的にはAnchorで培った技術を取り込めば、実現はそれほど難しくないと思われますので、2022年中には世界的に公開されるかもしれませんね。
Spotifyをとりまく音声市場
Spotifyが独自配信を目指すのには理由がありそうです。
YouTubeのポッドキャスト参入が噂されている
まず背景として、音声市場への大手の参入や競争激化があります。
リーク情報とされていますが、YouTubeがポッドキャストを取り込んで動画化して配信できるようになる、というのはあり得る話しです。じつは、YouTubeはすでにYouTubeMusicで音声広告を配信しているのです。音声広告をさらに広げるコンテンツ戦略として、すでにあるポッドキャストを取り込もうというのは、とても合理的ですし、彼らの技術力があればまったく問題なく実装できるでしょう。
そしてクリエイターにも利益がありそうですから、良い番組もあつまりそうです。Spotifyの音声広告の競合としては、もっとも戦いたくない相手でしょう。
Appleがサードパーティ対応
Appleはサードパーティ向けにポッドキャストのアップロード対応を発表しました。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2205/17/news104.html
すでにサードパーティの参加があるとされ、これにより、Appleのポッドキャストサブスクリプションの充実など、より魅力的な番組の充実が期待されます。
Amazonもポッドキャスト対応を拡充
Amazonはすでに、AmazonMusicでポッドキャスト対応をし、Amazon Music for Podcasters というポッドキャスター向けの管理画面も充実させています。
そして、Amazonは何より、オーディオブックのAudibleがあります。音声まわりも抜かりはありません。Audibleのサブスクなど、課金まわりもいつでも対応はできそうです。
ソースは不明なのですが、ポッドキャストプロデューサーのKONさんが、音声アプリの国内シェアについて投稿していましたが、なんとAmazon Musicはトップです。
国内だとAmazon musicユーザー多いのは盲点だって👀
最近Amazon、ポッドキャストに注力してる感あるし、おすすめに載るとめっちゃ再生数伸びる事例もあったからAmazonで配信してない人はとりあえずRSS登録しといて損は無いと思う pic.twitter.com/g2YTB2dlkS— KON🎙ポッドキャスト専門プロデューサー (@konteer10) June 15, 2022
ポッドキャストをとりまく、海外プラットフォーマーの戦いはもう本格化しているのです。
Spotifyの不安視されるビジネスモデル
Spotifyの株価は、2021年2月に365ドルをつけたのをピークにじりじりと下落し、2022年3月18日時点では145ドルと、ピーク時から6割近くも下げています。
Spotify、音楽配信1位独走でも「4億ユーザー獲得してようやく黒字」のビジネスモデルに潜むリスク | Business Insider Japan
https://www.businessinsider.jp/post-252297
Spotifyのビジネスモデルは、現状どれだけユーザーが増えても、アーチストへの支払いが一定数ある以上、いつかNetflixのように天井がきてしまいます。そこでNetflixはすでにゲーム事業への参入を発表しています。
Netflixがオリジナル作品でゲーム事業参入 新体制に見る本気度:日経クロストレンド
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/01685/
やはり、オリジナル商品をつくり、SPAのような高収益体制を構築する必要を迫られています。
激しくなる音声配信まわりでの競争、不安視されるビジネスモデル、とSpotifyはさらなる成長ドライバーの獲得を余儀なくされています。
オーディオブック企業を傘下に
そこで、2021年にSpotifyは、オーディオブック配信大手のFindawayを買収し傘下にしました。ポッドキャスト配信のAnchor、ポッドキャスト広告およびパブリッシングMegaphone、
>>Megaphone買収によるSpotifyのポッドキャスト広告への投資強化策とは – Spotify Japan
>>SpotifyがChartableとPodsightsの2社を買収..そしてポッドキャスト広告に起きること
ビジネスを拡大すべく多くの布石を打ってきました。ですので、今後の流れとしては、音声広告配信の強化(YouTube対抗)、オーディオブック配信(Audible対抗)と、全方位で徹底抗戦していくことでしょう。
あとは個人的には、音声ARにいくべく、META社(facebook)と資本提携などすれば盤石の布陣になるような気がするのですがどうでしょうか。個人的には音声ARにとても注目しています。
たとえAnchorとカニバリを起こしたとしてもSpotifyが音声の自社配信にこだわるのには、自社でコントロールできる音声配信データをかかえ、ビジネスのスピードを加速させる必要があるのです。競争環境が進化のスピードをはやめることを求めているのです。株価などから見ましても、そう時間はないと思われるのです。
Spotify 新しいコンテンツ王国の誕生 | スベン・カールソン, ヨーナス・レイヨンフーフブッド, 池上明子
国内音声配信者はどうするべきか
すでに、Amazon Audibleでは、個人レーベルとおぼしきオーディオブックの出版が増えています。現状、AudibleはKindleのように個人が手軽に出版できる環境ではありません。そこは、今後Spotifyが、Findawayをうまく取り込めれば優位に立てるでしょう(Findawayは管理画面などがあると聞きます)。
ポッドキャスターやポッドキャストプロダクションは、オーディオブック出版のノウハウも今からためておくべきでしょう。
また、Anchor配信者は、Spotifyにおけるレコメンドの優先度が、Spotifyネイティブのポッドキャストに相対的に負けてしまう可能性はあるかもしれません。どんなに良質なポッドキャストでも、「儲かる番組」のほうをより強くレコメンドする可能性はゼロではありません。そのあたりは、YouTubeを見れば明らかです。
ですから、Patreonやnoteメンバーシップなどで、直接ファンとつながり収益を安定化させておく必要があるでしょう。海外ではすでに多くのポッドキャスターがPatreonでドリームをつかんでいます。
その他ポッドキャスト配信では、Radiotalkではライブなどでファンと直接つながりスコアを安定稼げれば、メンバーシップの権限がもらえるなど成功をつかみとることができるでしょう。Radiotalkは井上社長もあるインタビューで「ギフティング市場を意識している」とこたえていたことがあります。今年上場したツイキャスのようなビジネスを描いているのだと思います。最近ですと、ライブアプリ大手のpocochaも、ボイスポコチャを立ち上げるなど、ギフティング市場はますます盛り上がりそうな勢いです。
実際、Radiotalkではメンバーシップにより、50万コイン(換金率は非公開)のメンバーシップ会員を複数人もつトーカーも出ています。Radiotalk配信者は、こうした流れにのっていくとよいでしょう。
では、一部のインフルエンサーを除くVoicy配信者と、stand.fm配信者はどうするべきか。プラットフォームとしての動きは上記の流れからは、これまでのアップデートやビジネス展開を見ますと、どうも乖離しているように見えます。配信者は自らメンバーシップの会員獲得をしたり、スポンサーや案件を探したりするなど、収益を安定させる工夫が必要かもしれません。
よい音声番組をどう作っていくのか。プラットフォームも配信者も模索がつづきます。
ちなみにわたしは音声配信はバズらないからいいと思っていますので、細々とひっそり続けていくつもりです。