クリエイターが直接販売するクリエイターエコノミーでは、物流の責任も最終的にはクリエイターが負うことになります。しかし、今後国内物流は逼迫することが予想され、ある程度のリスクはあらかじめ織り込んでおく必要があります。わたしが、経験した過去の物流のはなしをします。
物流の課題は昔から変わっていない
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自分の作品がファンに届かない、届いたけれど配送で低評価がついた。クリエイターが直接販売するのであれば、ファンに届けるまで気が抜けませんよね。
しかし、すごもり需要が伸びる中、物流の逼迫が問題になっています。
1日200個 過酷さ増す宅配ドライバーの実態
https://bit.ly/33cXwbM
今日は200個を運ばないといけない--。横浜市の男性(44)は今年9月ごろ、「過大な仕事を押し付けられ、ずっと運転し続けている。このままでは事故を起こしたり、倒れたりして、荷物に殺されるかもしれない」と危機感を抱いたという。
物販を行うクリエイターは最終受け取りまで対応しなくてはなりません。しかし、現実には今後こうした状況が、好転する材料はとぼしく、品質低下をある程度は意識しておく必要があるかもしれません。
クリエイターが意識するのは行動するタイミング
具体的には、月に何%の不配が起きたら対応するなど、閾値を決めて、ふだんから情報収集だけはしておけばよいでしょう。
ふだんからクリエイター同士よこのつながりを広げるなどして、情報収集はしておくものの、実際に行動するのは閾値をこえたら、としておけば迷わず対応できます。
普段からネガティブの準備をしておけば、マイナスを最小限に食い止められます。普段から、別の物流をバックアップとして、試験的につかっておくのも良いかもしれません。とにかく備えあれば憂いなしです。
トレーサビリティが発達してもバトンは人が受ける
わたしは数年前、ヤマト運輸のハブターミナルで働いていたことがあります。
そこで、深夜帯に大量に集まってくるトラックに、リボンをわたすという作業をしていました。人手です。
物流は、バトンタッチで、効率化がはかられます。しかし、そのときに、かならず別な人に荷物が渡ってしまうのです。セキュリティから考えれば、間にはいる人が少なければ少ないほうがよいのはすぐにわかると思います。実際、わたしが働いていたターミナルでも、運んでくるのは、ヤマトではなく委託された大型トラックがほとんどでした。ですから、荷物を開けたといったことなないよう封印をするのです。それがリボンです。
このように、物流では、荷主と受け取り以外が関われば関わるほど、ロストしたり盗まれたりするリスクが発生するわけです。しかし、効率を考え海外では、たとえば、団地に配送各社が荷物をまとめて置くだけおいて、あとはその団地の専門業者がふりわけることをするそうです。たしかに物流量は増やせます。
じつは日本でもそうした地方への配送で、2016年に実証実験を国交省がおこなったことがあります。そして、どの地域でも、効率はよいという結果がでたものの、でもシステムがないと大量にはさばけない、と結論づける報告が多いのでした。
わかっているけれどできない。しかし、効率だけでなく環境負荷も考えれば、物流の効率化は不可避です。そうしなければ、届かない荷物も増えてしまうかもしれません。
郵便物配達せず隠した疑い、男を書類送検「面倒だった」:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASN1R5J66N1RULOB00J.html
前述のように、業者がいないから別な事業者をわりふればよい、というのは対処的な方法であって、今後もふえるであろう物量に対しては社会も声をあげないといけないのではないでしょうか。そうしなければ、しわ寄せが弱い人へむいてしまうことは想像にかたくありません。
いちクリエイターであっても物流に責任をもつ、せめて把握はしておく、というのはファンへの責任だと思います。面倒なことであっても逃げない姿勢が共感をよび絆を深めてくれるはずです。
前述の記事をひとごとにとらえず、自分ごととしてとらえることが期待されています。