コンテンツを売っていくにもマーケティング力が欠かせません。
みなさんこんにちは、元大学講師のカグア!と言います。99年からいくつかの著書や教科書を書かせていただいてます。
小説家になるといっても、今はいろいろなキャリアがあります。まして食っていくとなりますと、それなりに大変な状況も。
なにかの賞を受賞してデビューというキャリア以外に、最近ではセルフ出版とよばれる、電子書籍でのデビューが注目されています。
そこで今回は「具体的に稼げるようになる戦略」シリーズの第2弾として、とくに電子書籍からのスタートアップを念頭にした、小説家として食っていくためのマーケティング戦略について、数字などを考えてみました。ご参考になれば幸いです。
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この記事の目次
作品作りと生産効率を考える
さて、それでは、小説家になるためにまず重要な作品について考えてみます。
食っていくためには生産効率がとても重要です。多くの小説家も作品以外にコラムを書いたり、TV出演したりするなど、日銭を稼ぐにはいろいろな活動を組み合わせています。
有名な小説「坊っちゃん」。
こちらは比較的短いほうの小説ですが、イメージがわきやすいと思いますので、これを引き合いにして、どれくらいのコストで作品を世に出せるのか、試算してみます。
・坊っちゃん
・約8万6千文字
・分速50文字(入力だけなら分速100文字は超えるが考えながらだとどんなに頑張ってもこれくらいになる)
・1720分=約29時間=1日8時間労働で約4日
・打ち合わせや推敲などで2日
・制作期間:1週間で1本=月4本
制作能力としては、個人1人でやればこのくらいが限界だと思います。で、家族を養い住宅ローンや自分の老後を考えますと、手取りで50万はほしいところ。とすると、1冊の売上で、12万5千円は死守しなければならないということになります。
・1冊の目標売上12万5千円
・Kindleのみで販売すると料率70%=約18万円の売上を死守
・250円の売価設定だと、毎回720冊を売らなくてはならない
>>Kindle本の売上を公開しちゃってもいい件の「裏付け」をとったので報告する – 忌川タツヤのブログ
ただ、こちらのブログ記事では4冊出されて合計200冊ごえ、ということですから、720冊というのが相当大変な冊数であることがわかります。
作品の質を下げることはレビューや売上に直結しますので、厳しいわけですが、現実的は売価1000円でも買ってくれる内容であれば180冊となり、かなりハードルは下がり、そこを狙いつつ、小説教室、セルフ出版講座など、高単価のサイドビジネスで稼ぐというのが、現実的な道になるかと思います。
ちなみに、出版社から発刊される紙本の一般的な印税はおおむね10%です。出版社の考え方や作家、広告費のかけ方によって、12~7%程度は前後するかもしれませんが、印税はおおむね10%と考えて良いです。
一般ビジネス書が1万部でヒットといわれますが、1500円の本ですと印税は150円、1万部売れますと印税は150万円ということになります。車が買えるほど、ではないんですよね・・・。しかも継続的な収益でもないですし。稼げる、一生食っていく、となりますと力強さにかけます。
コンテンツ消費時代の戦略を考える
国内で出版される書籍は相当数あり、マンガの新刊だけでも月に1000冊は発行されるそうです。つまり、一個人がしかも電子書籍などでセルフ出版したとしても、埋もれてしまうことが当たり前なのです。
唯一陽の目を浴びるチャンスは新刊というトピックが活かせるときだけです。そこでスタートダッシュをかけられなければ、まず埋もれるといって良いでしょう。
しかし、電子書籍ではあれば価格改定を柔軟に行うことで、話題作りができます。参考になりますのが、「郡雛」という文芸電子雑誌です。
>>【廃止】「月刊群雛 (GunSu)」へ作品を掲載するための共通レギュレーション #群雛 :日本独立作家同盟
http://www.allianceindependentauthors.jp/2014/03/work-published-regulation-to-gunsu.html
※最新版のレギュレーションはこちらですが、価格については上記に言及があります。
>>レギュレーション:群雛ポータル
2015年5月1日現在「月刊群雛 2015年04月号」は、
・オンデマンド印刷版:1920円 (電子版無料特典)
・電子版:450円 (SOCIAL DRM)
となっています。バックナンバーでは、
紙版 1840円(電子版無料ダウンロードコード付き)
電子版(新刊)800円450円
半年後 400円200円
1年後 200円
※バックナンバーも一部の号で800円でした。※2015年7月31日
となっています。iBooksや一部のストアの事情で少し高くなっているケースもありますが、おおむねこのような感じです。このように、価格に訴求することで話題作りを手に取るハードルを下げる工夫をされています。
そして、電子書籍のセルフ出版の第1人者といえば、小説「Gene Mapper」で有名な藤井太洋さん。彼も売上をさらにリスティング広告に投入するなど、ネットマーケティングを徹底的に活用してプロモーションしたことでブレイクしたことは有名です。
>>藤井太洋「Gene Mapper」公式サイト:プロモーション
>>電子書籍が切り開く個人出版の新たな地平~『Gene Mapper』作者・藤井太洋氏インタビュー~ (1/3)
>>電子書籍「藤井太洋インタビュウ」を補完して – Mentha Spicata
そうでない場合、いちぶの紙本有名作家さんが、独自にセルフ出版を始めた=もともと読者を持っていた、というケースでない場合、注目されて過去作品も売れる、というケースはまずありえないと考えたほうが良いでしょう。
つまり、本を出し続けて積み上げでだんだんと売上が安定していく、ということはまずない、という厳しい世界であると言えます。情報はネット普及により、どんどん0円に流れていきますよね。
ヒットの仕組みを理解する
ヒット作品は、もちろん狙って打てるものではありません。
しかし、その確率を高める方法をヒットメイカーの方々は実践されています。上図のようなタイミングを推し量り、それまでに周到な準備と情報の蓄積を進めます。
・タイミング
例:芸能人の引退のときにその人のメモリアルブック
・プロモーション
例:ネット広告や書影、ソーシャルなどを駆使する
・背景や説得力
例:上場以来黒字続きの社長がビジネスについて語る
作品のクォリティは当然のようにあって、それプラス上記のようなファクターが、ヒット作品にはたいてい備わっています。とくにタイミングは重要ですが、ただそれをコントロールするのも難しいのが事実ですので、ある程度の「運」も必要なのだと思います。
その「運」を待つために継続が重要ともいえ、小説家として食っていくことを考えたとき、当然ビジネスとしての有利である資金力があるにこしたことはないでしょう。とはいえ、お金があればヒットが生まれるものでもありませんので、必要条件ではないとは思います。
スタートダッシュの重要性
全国に18店舗、海外に1店舗を中規模大型書店運営の旭屋書店では、じつはネットで在庫数が確認できます。紀伊国屋書店でも在庫は確認できるのですが、冊数まで正確に出るのは大手ですと、旭屋書店くらいです。1店舗だけですので、あくまで参考値ということで、ご留意ください。
>>旭屋倶楽部
ちょうど人気タイトルの続刊が発売されましたので、在庫数をチェックしてみました。
「七つの大罪14」4月18日からの在庫数
18日 2196冊
19日 1600冊 前日比販売部数 596冊
20日 1541冊 前日比販売部数 59冊
23日 1183冊 3日前比販売部数 358冊
大物作家でもスタートダッシュで相当数の売上を出しています。逆にいえば、初動で苦しんだ作品は挽回が難しいことを意味しています。大物でさえそうなのですから、コンテンツ大量消費時代には、スタートダッシュがいかに重要かがわかります。
スタートダッシュ成功のメリット
スタートダッシュに成功するには、ヒット作の条件に書きました施策を愚直にこなすしかありません。
そのうえで、もし初動に成功できれば、ランキングに登場できるなど二次的な成果が期待できますから、せめて5本に1本ヒットが出れば、残り4本多少外しても帳尻が合わせられます。スタックが貯まれば、余裕をもった作品作りにもいかせるはずです。
キャリア形成の難しさ
新人賞や多くの文芸大賞など、小説家として実績をつくり、世の中にアピールできるのは、そういったビッグタイトル受賞です。
しかし、実際には私たちはそのすべての人を知っているわけではないですよね。この受賞というシステムにも、当然出版社としての思惑や暗黙のルールがあり、食っていけるようになるためには、それなりの苦労が必要です。
芥川賞候補になっても単行本にならない厳しい現状
>>作家志望なら知っておきたい最低限の出版のはなし【第1回】純文学系新人賞編 | CRUNCH MAGAZINE(クランチマガジン)
そもそも「新人賞」とは何でしょうか?知人がいうには「プロへの登竜門」であり「作品を世に出すための審査機関」
>>理論上「新人賞を受賞できる」方法。 読者は、なにを求めているのか?
デビューした作家のペンネームが知られるようになり、累積で元を取るまで平均して3年ほどの時間がかかる
あくまでネットの情報ですが、私もいくつか出版に携わってきたなかでは、まんざらでもないと思います。受賞はスタートなのであって、その後、一生食っていけるかは運と実力次第なのです。
面白い作品がかけることが前提で、現代ではそのプロデュース力が問われるところと言えるでしょう。
まとめ:100冊売れる1500円本を月に4タイトル
さて、こう書きますと現実はかなり厳しいことがおわかりいただけると思います。
ただ、個人作家として小説家になるには、有利な点が1つあります。事務所や法人税など必要経費を極力おさえられる点です。事務所を構えたり、法人登記したりしますと、それらの固定費で毎月4~50万円はかるく吹っ飛びます。まして、組織化しようとしますと別な作業が発生します。
つまり、個人作家の強みは、個人であることを徹底的に活かし運営コストをおさえ、継続的に出版し続けることになります。
その上で、1冊1500円でも売れる専門的な知識を身につけ、月4タイトルを目安に出版し続ける。
販売目標は月間100冊です。これで、収益の目処がたちます。
そして、小説講座などリアルのイベントで稼ぐサイドビジネスを展開します。そうすることで、毎月の手取り50万円という額が、現実味を帯びてくると思います。
ネットで情報が、かぎりなく0円に流れるというトレンドの中で、そのコンテンツで勝負するということは、継続とリアルでの集客こそが王道の印税戦略なのです。
作品のプロモーションに役立つセミナー
さて、小説家になって、セルフ出版をしていくにも、出版の敷居が低い分、自分ですべてを管理、マネージメントしなくてはなりません。とても厳しい世界です。小説家になることは簡単でも、食っていくには厳しい、というわけです。
そんなおり、インディーズ作家を応援する電子書籍・文芸マガジンである「郡雛」を出版しています、日本独立作家同盟が主催のセミナーが注目を集めています。
藤井太洋「電子時代、独立作家の執筆・出版手法」 | Peatix
セルフ出版で注目を集めた藤井太洋氏が講師をつとめ、セルフ出版時代の執筆や出版手法について、解説されます。Web界隈の方々でも、販促やPR、コンテンツマーケティングに興味のある方なら、オススメです。
私も実際に藤井さんにはインタビューしたことがありますが、いやはや凄いですよ。ご自身でリスティング広告を駆使していく、ほんと参考になります。
小説家になるためのプラットフォームやツール
KDPなどセルフ出版にEPUB作成ツールの定番。
>>電書ちゃんのでんでんコンバーター – でんでんコンバーター
日本独立作家同盟で有名な鷹野さんの解説。
>>GooglePlayブックスで個人出版(0)そもそも Google Play ブックスってなに? :日本独立作家同盟
国内の電子文芸雑誌の草分け。寄稿も先着順なのでぜひ。
>>群雛ポータル
ご参考になれば幸いです。
セルフ出版の草分け、藤井太洋さんのインタビュー。
ダイレクト文藝マガジン 002号「藤井太洋インタビュー / KDPノウハウ本メッタ斬り!」 sasaki daisuke, imagawa tatsuya, Fujii Taiyo: Kindle
人気ブロガーやネット界隈で有名なクリエイターさんの本。
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電子書籍での著作権の第1人者。鷹野さんの著書、人気です。
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