レモンジーナ品薄感の「違和感」は今後も続く、流通在庫という話

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正確な需要予想にはもう少しデータが貯まらないと。

以下、永江さんの記事もっともだと思いました。ソーシャル拡散が有効な属性ってどういうところ?というマーケティングの本質的なところを指摘した記事です。

>>いまやソーシャルを無視しての生産計画はあり得ないことをレモンジーナとヨーグリーナが証明してくれた | More Access! More Fun!

さて、その件について、私も思うところありましたので、追記的に書きます。

流通在庫といって、ネット通販をやられている方にはすごく当たり前の話かもしれませんが、リアルの商品を扱うマーケッターには欠かせない知識ですので、ご紹介します。


世界一わかりやすい在庫削減の授業: 若井 吉樹: 本

流通在庫という考え方

一部の人気店舗には在庫がすっからかん、でも他店舗では商品はガンガン余っている、ゆえに増産はできない。そのようなことは様々な業種で、じつは普通に起こっています。流通全体を見たとき、その在庫は余っているという状況ですね。

>>ホームセンターてんこ増刷への道+ – とだ勝之 | ブクログのパブー

たとえば、こちらの人気コミックは2010年に、2chなどネットの拡散によりAmazonでは劇的に売れ完売するも増刷ができずチャンスロスを起こした事例として、コミック界隈では有名な事例です。

Amazonという巨大な流通では、ものすごい数が売れて、あたかも凄く売れているように見えるが、市場全体でみるとじつは在庫がたくさんある、という。経済の二極化というか、売れるところでは激烈に売れて他はそうではない、という状況が随所で見られる、それがネットという情報流通により、より格差が広がったということかと思います。

このように、市場全体で見たトータルの在庫数を流通在庫(市場在庫)といいます。出版社としては、市場にまだ在庫があるのでうかつに増産できない、という状況がありうるのですね。

ただ、Amazonの場合、おそらく在庫の面積などで出荷点数が決められているはずで、じゃあそこに集中させればよいという簡単なものでもなく、当時物議を醸しました。結果としては、出版社が特例として増刷を認めたことで収束しました。これにより、ホームセンターてんこは人気コミックの仲間入りを果たします。


ホームセンターてんこ増刷への道+(同人誌フルカラー32p,2.5版): とだ勝之, 元気堂: 本

市場特異性の差分を考慮する動き

さて音楽業界では、すでにランキングがあまり意味をなさなくなっている、という声がきかれるようになっていますよね。

音楽チャートの代名詞であるオリコンチャートでも、一部のアーチストの握手券付CDなど、おまけ目当ての購入や一部の熱狂的なファンを持つアーチストの影響が影響を存在感を大きくしているからでしょう。

>>朗報?悲報?オリコンがチケット付きCDの合算集計中止へ

結果、今年の3月にオリコンはランキングの集計方法改訂を余儀なくされました。ただ、その精度が、今後リスナーからどの程度、支持を得られるかは未知数です。ただ、これも特異な販売状況による、全体の実態がつかみにくくなる事例と言えるでしょう。

ただ小売も、ランキングを目安に発注をかけるといった実利がある以上、ランキングという指標が、そうそう無くせないのも現実なのです。

前述の例ですと、書籍の場合ですと、新宿紀伊國屋書店本店の売れ行きを、発行部数の参考にしているという声を聞いたことがあります。増刷や在庫のリスクがある商品については、どうしても、そういう指標となるデータにしばられてしまうのものなのです。それくらい需要予測というのは難しいといえます。


逆境経営: 桜井 博志: Kindle

他の店舗から回せばいいのでは?

消費者からすると、では他店舗の在庫を売れているお店に回せばいいのでは?と思うかもしれません。

しかし、在庫というのはすでに店舗に売ったもの、という経理処理が多く、そう簡単には他の店舗には回せないのです。とくにコンビニなどではフランチャイズ展開が多いため、個々の店舗が独自に帳簿をつけるわけで、本部はデータこそ管理していますが、帳簿までは管理は出来ないわけです。

そうなりますと、いったん在庫として入荷したものは、その売り切れたお店の人が直接買い付けに来る以外は、そうそう流通にもどすわけにもいかないのです。物流とはそれほどシンプルではありません。そこにリアルの物流の難しさがあります。

データが貯まるまではしばらく続く

ですから、生産中止も、おいそれと増産ができないことも、本音だと思いますしじつはよくあることで、とても難しい。ですので、そういうデータがたまらない限りは今後も続くと思います。

>>“あおり商法”サントリー食品が全面否定 「ヨーグリーナ」品薄で謝罪 (1/2ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)

ただ今回の件については、サントリーの生産管理の部署の人たちが、そういったソーシャルやネットの拡散力に対して不勉強だったというだけかと思います。Amazon売り切れ問題などネットの購買力の特異性は、2chの頃からはありましたから。

これらのデータが貯まるまでは、しばらくこういったレモンジーナやヨーグリーナのような件は続くと思います。データがそろっても生産する工場の段取り等もあり、そうそう生産調整というのもいきなり完璧に出来るわけではないからです。実際、コカ・コーラの製品を伊藤園の工場で作るなど、生産の場面ではいろいろと調整があり、それくらい需要の予測や生産調整は難しいものだからです。

まして、サントリーやセブンなど、ブランドがあるところでは、これからも流通在庫の最適化には苦戦すると思います。ただ、そうそう無くなっているわけではないので、報道に振り回されないようにしましょう。

しばらくすれば普通に買える

>>売り切れ続出のセブンイレブン「サラダチキン」を効率的に買い集める方法〜9分で11個の世界記録 : Blog @narumi

物流に定評のあるセブンイレブンでも、サラダチキンというヒット商品が出たときには、一時品薄になりチャンスロスをしていました。

ですので、そのように経験値の少ない企業からヒット商品が出ますと、まだまだこういった流通在庫の問題は続くと見て良いでしょう。ネットの拡散力が下がる可能性は低いと思いますので。

ですので、今後生産中止のニュースがあっても、「市場には在庫があるのね、だから増産ができず出荷停止なのね」と冷静に受け止められるはずです。

しばらくすれば、セブンイレブンのサラダチキンのように安定して、どこでも入手が可能になります。


在庫管理のための需要予測入門: 淺田 克暢, 岩崎 哲也, 青山 行宏, キヤノンシステムソリューションズ株式会社数理技術部: 本

永江さんの記事のように、ネットの普及により、格段に流通在庫の最適化の難易度が上がりました。今後、それらも含めたナショナルブランドの舵取りから、目が離せません。

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在庫ってほんと難しい。